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強打の左打者、犠打数わずか2。二番・川端慎吾の粘りの打撃が日本シリーズのカギ【新・燕軍戦記#16】

いよいよ明日から始まる日本シリーズ。シーズン90勝と圧倒的な強さでパリーグを制した福岡ソフトバンクホークスに挑む東京ヤクルトスワローズにあって、打線のキーマンとなりそうなのが真中野球を象徴する「強打の二番」川端慎吾である。

2015/10/23

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鷹投手陣攻略のカギを握る粘りのバッティング

「相手は右ピッチャーばかりですからね。左バッターが打たないといけないと思います」

 日本シリーズを前にした調整期間に川端が話したとおり、シリーズで対戦するソフトバンクの先発陣には武田翔太、リック・バンデンハーク、中田賢一、攝津正、ジェイソン・スタンリッジと、右投手がずらりと並ぶ。なにしろソフトバンクは両リーグトップのチーム打率を誇る打線のみならず、チーム防御率もリーグNo.1と投手陣も強力なだけに、左バッターの川端には打線のキーマンとしての期待がかかる。さらに──。
 
「向こうは素晴らしい先発を揃えているので、簡単に点は取れない。みんないいピッチャーなんで、なるべく球数を多く投げさせて早くバテさせるとか、向こうが根負けして甘いボールが来るまで粘るとか、そういうところになってくると思います」
 
 真中監督が話すソフトバンク投手陣の攻略法を体現しているのが、まさに川端のバッティングである。「追い込まれた時点で、とにかくフルカウントまで持っていこうという意識に切り替える」と本人も言うように、ツーストライクを取られると際どい球はとにかくファウルで逃げる。あまりの多さに、「オールスターでは(他球団の選手から)『あのファウルは遅延行為でしょ』って言われました」と苦笑するが、何球も何球もファウルで粘ってボール球には手を出さず、少しでも甘くなったところを確実に仕留めるのが、その真骨頂だ。
 
 ボールを手元まで引きつけ、それこそキャッチャーのミットに収まる直前でもバットに当てることができる川端ならではの技だが、その類まれなバットコントロールに磨きをかけるための努力も怠らない。チームの全体練習が始まる前の早出練習で行う「ショートゲーム」もその1つだ。5、6メートルほどの距離から山なりの超スローボールを投げてもらい、それをライナーで打ち返すというこの練習で、常にパートナーを務める福川将和打撃投手が証言する。
 
「ほかの選手もやってますけど、打ち返す能力が全然違います。しかも、ショートゲームでやっている形を、そのまま試合でやってる感じですね。自分の(打つ)ポイントを確認しながら『(球を)ここまで引きつけたら(打球が)こっちに飛ぶ』っていうのを全部考えてやってると思うんですけど、それをそのまま試合でできるからスゴいですよ」
 
 明日から始まる日本シリーズ。川端自身「あれだけぶっちぎりで優勝してるんですから、強いですよ」と言うとおり、ソフトバンクという壁はとてつもなく高い。だが、川端には強力な『援軍』がいる。CSファイナルステージでも、全試合で観戦に訪れた夫人と長男である。
 
「(日本シリーズも)来ると思います。そんなに気にしてないですけど(妻子が来ると)成績はいいみたいですね」
 
「バラ色のシーズン」を締めくくる最後の大舞台。最高のフィナーレで飾るためにも、妻子が見守る前で持ち味を存分に発揮し、チームを勝利に導くしかない。

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