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単打量産の阿部慎之助、ベテランの生きる道――36歳、再出発のポストシーズン

クライマックスシリーズに入り、巨人の阿部が安打を量産している。それらすべてが長打ではなく単打。この打撃スタイルに込められた想いとは――。

2015/10/16

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現役生活を1年でも長く

チームがCSファイナル進出を決めた12日の阪神戦、先制犠飛とタイムリーを放ちお立ち台に呼ばれた阿部は唐突にこう切り出した。
「関本選手が同級生なんですけど、引退するということで。本当に19年間お疲れ様ですと言いたいです。
同年代ですし、すごく思い出がたくさんあった選手だったので、すごく寂しいです」
勝利に沸く東京ドームのど真ん中で目を真っ赤にして、引退する阪神関本賢太郎へのエール。
そこにはひたすら明るく「最高で~す!」と絶叫していた頃の背番号10とはまた別の顔。
さらにバットを短く持って打席に入ったことを聞かれると、ある先輩の名前を挙げた。
「昔、大道(典良)さんに”バット短く、息長く”という名言をいただいた。大事なときにそれができて良かった」

2015年、若手時代の阿部とバッテリーを組んだ高橋尚成や木佐貫洋が相次いで現役引退を表明。
巨人でともに一時代を築いた小笠原道大や谷佳知もユニフォームを脱いだ。
歳の近い後輩たちも久保裕也が戦力外通告を受け、矢野謙次もすでにトレードでチームを去っている。
しかもチームは世代交代の真っ只中。
今季から自身は一塁転向。キャプテンを10歳下の坂本に引き継ぎ、正捕手の座も26歳の小林誠司に譲った。

時間は容赦なく進んでいく。
故障にも泣き、シーズン打撃成績は打率.242、15本塁打と低迷。
同時代を生きた選手たちも続々と巨人からいなくなる現実。
全盛期のようなバッティングは今の自分にはもうできないかもしれない。
それでも俺は俺の仕事をする。
バットを短く持ち、ボールに食らいつき、なんとか塁に出ようとする背番号10の姿。
この1年をかけて、阿部はようやく「日本を代表する打てる捕手」だった頃の自分と決別したのではないだろうか。
それはファンからしても同じことだ。
最後の最後で、ようやく捕手ではない4番ファースト阿部を受け入れた。

さらば、巨人史上最強の捕手。
阿部慎之助、36歳。
秋の神宮球場で再出発である。

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