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違和感を覚えた、山本昌の引退登板――ファンとの別れの形に多様性を

球界のレジェンド・山本昌の現役引退登板は、広島のクライマックスシリーズ進出を懸けた一戦だった。「引退試合」を公式戦で行う必要があるのか。MLBのような1日契約という方法もあるのではないだろうか?

2015/10/11

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打者一人の限定登板

 一時代を築いたレジェンドたちが、ここまで大挙してユニフォームを脱いだシーズンも珍しいのではないだろうか。彼らによってプロ野球の歴史に刻まれた偉大な軌跡には心から敬意を表したいし、魂のこもったプレーを通して与えてくれた数々の感動は絶対に忘れない。

 同時に、どうしても違和感を禁じ得ないシーンが終盤に相次いで見られた。今シーズンもまた、公式戦の一部が引退試合の舞台となったことに対してだ。

 まだ記憶に新しいのは、10月7日にマツダスタジアムで行われた広島東洋カープ対中日ドラゴンズ。中日の先発マウンドには、今シーズン限りでの現役引退を表明している50歳の左腕・山本昌が立った。

 先頭打者限定での登板であることが、あらかじめ発表されていた。

 山本自身も「いまの自分にできることを一生懸命頑張る」と、真っ向勝負を期して現役最後の日を迎えていた。

 ともにレギュラーシーズンの最終戦。
 加えて、阪神タイガースと3位の座を激しく争ってきた広島にとっては、勝てばクライマックスシリーズ(CS)出場が決まる大一番だった。

 山本の登板は今シーズン2度目。50歳の誕生日の2日前、8月9日の東京ヤクルトスワローズ戦(ナゴヤドーム)で先発したが、振り切った左手の人さし指を右足に当てて突き指するまさかのアクシデントが発生。二回途中、わずか22球で無念の降板を余儀なくされていた。
 その後に患部はじん帯まで痛めていることが判明。ブルペンでの投球練習すら再開できない状況で迎えた通算514度目の先発は、阪神と広島のCS出場権争いに影響を与える恐れも少なからずあった。

 先頭打者の丸佳浩に本塁打を浴び、それが決勝点となる展開も十分にあり得る。そうなれば未曾有の批判がわきあがったはずだ。阪神ファンも黙ってはいないだろう。

 調整不十分での登板を認めたうえで、山本は広島戦前日にこうも語っていた。

「もちろん手加減は無用だし、僕も一生懸命投げる。打者1人と決まっているのでご容赦願いたい。最後なので勘弁していただきたい。必死で投げるので」

 果たして、山本は初球、2球目とストレートを投じるも、ストライクゾーンから大きく外れる。3球目のややボール気味のスライダーを丸はバットの芯でとらえられず、平凡な二塁ゴロに倒れた。

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