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〝カンフル剤〟となるシーズン途中の監督交代劇~代行監督がチームにもたらすメリット

今季、監督代行を務めた田邊徳雄が来季の正監督に就任した埼玉西武ライオンズ。コーチ陣も新たな顔ぶれが揃い、新鮮な気持ちで現在、秋季練習に取り組んでいる。また、楽天の大久保博元前2軍監督も、田邊監督と同様のケースで来季の正監督へと就任。今季に限らず、こうした流れで監督代行から監督へとスライドする事例が近年、増えてきた。シーズン途中での監督交代や、代行監督が翌年以降も指揮を執ることのメリットについて考える。

2014/10/22

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代行監督はチームを〝よく知る〟人物

 今季の西武に限らず、近年、シーズン途中の監督交代によって、チームが上昇トレンドに乗るケースが目立つようになった。

 2008年5月に前任のテリー・コリンズ辞任に伴い、監督代行に就任したオリックスの大石大二郎(現・解説者)。2010年、当時ヤクルトのヘッドコーチを務めていた小川淳司の監督代行就任などが、その成功例として挙げられるだろう。

 両者に共通しているのは、スターティングメンバーやベンチ入りする選手を入れ替え、シーズン途中ながらチームを生まれ変わらせた点にある。

 大石監督代行は二軍から若手選手を引き上げ、積極的に起用。小松聖や金子千尋など若い先発投手の活躍もあり、就任段階で5位だったチームを2位に浮上させ、球団初となるクライマックスシリーズ進出に導いた。

 この若手起用は小川監督代行も同様だ。畠山和洋や川端慎吾ら打撃に光るものがある選手を次々とスタメンに抜擢。相川亮二や宮本慎也(現・解説者)ら、実力あるベテランを巧みに組み合わせてチームに一体感を生んだ。シーズン終了までに、就任当時19あった借金を完済。就任後の勝率が.621(59勝36敗3分)に達するなど、見事にチームを蘇らせた。

 なかでも、畠山の起用は目を引いた。それまでの内野手から、打力を生かすために外野手へとコンバート。守備を考えれば危険な賭けだったが、「本人も出場する責任を感じて、積極的にノックを受けに来た。同時に打席での集中力も上がっていった」と、眠れる大砲の意識に変化を生じさせた。

 両者はこうした手腕を評価され、大石監督代行はシーズン途中の8月に、小川監督代行はシーズン終了後に〝代行〟の2文字が外れて、正監督に就任。今季も前述した西武の田邊徳雄新監督や、星野仙一監督の病気療養のために7月に約3週間、一軍監督代行を務めた楽天の大久保博元新監督(前・二軍監督)が、来季から一軍の指揮を執る。

 このように、監督代行がそのまま監督へとスライドするメリットは、選手をよく理解している点にある。

 上記に挙げた監督たちは、一軍、二軍を問わず同球団での指導経験が豊富で、選手やチームを熟知。たとえ実績があり、周囲からの評価が高い名監督とうたわれる人物であっても、チームの慣習や雰囲気に馴染めず、選手への理解の浅さが原因で成績を残せなかった指揮官は歴史上少なくない。

 結果がすべてと言えるプロ野球の世界。〝代行〟の2文字が取れたことで、当然かかるプレッシャーは大きくなるが、同時に裁量権が増すことも事実。西武の田邊徳雄、楽天の大久保博元、〝代行〟から昇格した2人の新監督が見せる、来季のチーム作りや采配に注目したい。

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