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「悔いはあるけど後悔はない」――最終回を迎えた、漫画『プロ野球選手・山本昌物語』

球界最年長、現役最多勝利の男が、ついにユニフォームを脱いだ。中日ドラゴンズ・山本昌にとって、プロ野球生活32年間とはどのようなものだったのだろうか。

2015/10/09

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鈍感力が武器だった男も、流れには敏感に察知

 山本昌は自分が長らく現役を続けられた要因の一つに、鈍感力をあげている。
 
「40歳手前の頃、周囲は『もう十分やっただろう』という雰囲気になったのかもしれないけれど、そのムードに気づかなかったんだよ」
 
 過去の取材では何度も、それをネタにして笑い話にしてきたが、50歳を迎えた今、空気を読める力がついてしまったのかもしれない。ご存知のように今季、ドラゴンズでは多くのベテラン選手が現役引退を表明した。谷繁元信兼任監督。和田一浩。小笠原道大。川上憲伸……その流れの中に自分もいるのではないかと、敏感に察知してしまったのだろう。
 
 山本昌は8月に上梓した書籍『山本昌という生き方』の中で、次のように語っている。
 
「記録を達成した選手だからこそ、記録のためだけにプレーしてはいけない」
 
「僕らは戦力としてプロ野球選手でいたいと思っている。そこで今年1年チャンスを頂いて、このような成績で終わってしまった。たまたま記録が目の前にあるので、惜しいと言われるけれど、それがなければ今辞めるのは当然のこと。しっかり決断できたと思っている」
 
 来季も現役を続ければおそらく最年長勝利の世界記録は更新できるだろう。しかし、彼にそういう野球人生を送る決断はできなかった。

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