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「ラストダンス」で最下位脱出。栗山野球の体現者が見せた、栗山監督への恩返し【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#159】

栗山英樹監督が今季限りで退任となった。最下位脱出をかけたラスト2試合、この10年間の栗山野球のまさに集大成となった。

2021/11/01

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一気に意味合いが変わったラスト2試合

 10月30日ZOZOマリン、ロッテ最終戦。パ・リーグで唯一残ったレギュラーシーズン公式戦に出かけて行った。29、30日の2連戦が最後まで残り、ロッテ逆転優勝の舞台になるかもしれないカードだった。その場合は最終戦、佐々木朗希の登板になるはずだった。そんな試合、対戦相手のハムファンだってこの目で見たい。個人的には「ラストダンス」と名付けていた。ロッテは勝手知ったる仲だ。感覚としては旧友だ。1981年の前期・後期のプレーオフも戦っている。今回、ロッテに優勝マジックが出て、それを「51年ぶり」(1970年パ・リーグ制覇から数えて)と報じた新聞が多かったけれど、マジックだけなら81年前期優勝のときも出ていたはずだ。幼馴染のようなロッテ君と2試合「ラストダンス」を踊る。それは優勝のダンスか、絶望のダンスか。そんな風に勝手に盛り上がっていた。
 
 が、もちろんこれをご覧の読者は皆さんご存知の通り、ロッテは27日の楽天戦に敗れ優勝を逃した。オリックス悲願のパ・リーグ制覇成る! 2試合残った「ロッテ‐ハム」は消化試合になってしまった。ロッテは早々と佐々木朗希を30日に投げさせない(CSへ向け調整)と発表、「ラストダンス」の主題はあいまいになってしまう。
 
 ロッテにとってはCSへ向けた調整試合であっただろう。本拠地シリーズだから「ファンへの1シーズンのご愛顧に感謝して」的な意味合いもあるだろうが、何しろこの後、ZOZOマリンでCSをやるのだ(05年1stステージはプレーオフ)。ロッテが本拠地でCSを戦うのは初めてだ。球団もファンも力が入って当然。
 
 消化試合2戦の主題はむしろハムの側に色濃かった。29日、ついに新庄剛志・新監督の就任が発表になり、10年に渡る栗山政権は終わるんだなぁと実感がわいた。「ラストダンス」は栗山監督惜別が主題になった。10年は長い。札幌ドーム最終戦の栗山監督勇退のセレモニーの最後、選手が横一列に並び、栗山さんと言葉を交わすシーンがあった。あれは10年という日々を如実に語っていた。お世話にならなかった選手がいないのだ。よく栗山監督の功績として大谷2刀流が語られるけれど、もう今となっては大概のことは栗山さんがやっている。何しろ(1軍実績のなかった)中田翔を4番に据えるところから始まっているのだ。どの選手も栗山監督によって引き立てられ、チャンスを掴んだ。
 
 だから「ラストダンス」は恩返しシリーズだ。栗山野球の集大成を見せる機会だ。そして、実はハムには5位浮上の目があった。この2連戦、1勝1分以上で西武を抜いて5位確定だ。いわば「5位マジック2」で最終シリーズを迎えたようなもんだ。恩返しという意味では目標がわかりやすい。栗山さんを最下位で終わらせらんねぇだろ。あれだけ世話になった栗山さんだぞ。というわけなのだ。
 
 だからもしかするとこの2連戦、西武ファンが(ハムの次に)熱いまなざしを向けていたと思うのだ。何と西武が最下位でシーズンを終えたら42年ぶり、「西武ライオンズ」誕生の1979年以来だという。ライオンズ黄金時代、手痛い目に遭ったファイターズとしてはまことにやりがいのある(?)テーマだ。しかし「西武ライオンズ&埼玉西武ライオンズ」はこの間、Bクラスになったのはわずか7回、82年からは25年連続Aクラスだそうだ。どれだけ強いのか! だからどちらにせよ下位で、大差ないだろうと言われるかもしれないが、これはそこそこ大事業なのだ。
 
 3月以来ずっと最下位(正確には一度、たった1日だけ5位浮上して翌日、抜き返された)だったファイターズは燃えていた。サブマリンだ。潜水艦がずっと潜航して10月の最後ちょっとだけ水面に顔を出す。2021年シーズンはほとんどの日々、最下位暮らし。だが、最終的には5位で終える。そんなミッションなのだ。潜水艦のハッチが開いて栗山館長が帽子を振るところまで僕は空想した。

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