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2021年、大谷翔平が本塁打を量産できる宇宙人的メカニズム―MLB史上最も正確かつ強力な垂軸と体軸が爆発的パフォーマンスを生み出す(第2回)

現地7日に行われたレッドソックス戦で今シーズン32号本塁打を放ち、2004年に松井秀喜選手が記録した日本人の年間最多本塁打記録を塗り替えた大谷翔平。野球の母国アメリカで「ありえない」「地球人ではない」「宇宙から来た」と絶賛されている2021年シーズンの大谷だが、宇宙人と言いたくなるほど他の選手とは異なるそのパフォーマンスの中身、つまりはその脳と身体が織り成すメカニズムとは何なのか。結果としての記録や評価(人気、騒ぎも含め)よりも、真の“原因”こそ知りたいという玄人の読者のために、5月に『背骨が通れば、パフォーマンスが上がる!』(カンゼン刊)を上梓した高岡英夫氏が高度運動科学による分析を随筆風にお届けする。(全2回構成)

2021/07/15

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垂軸と体軸を生む超絶の動き

 
 でここからが、アッと驚くほど面白い話になるが、垂軸、体軸とも、正確な必要情報を集めるためには、体幹の動きはモゾモゾクネクネ、立っている姿はクターッタラーン、腕脚を含めた全身動作はナメラカ、シナヤカ……ということ以外にはない、というわけだ。大谷が全身の姿がクターッ、タラーンとして、動きはナメラカ、シナヤカ、でいるのはそのための必須不可欠の姿なのだ。
 
 かつてのイチローは、試合中でも体幹をモゾモゾクネクネと緩め解きほぐす動き(これを英語表現で「ルースニング」というが)を行っていたが、大谷は(S1S2)あたりはモゾクネ的ルースニングを行ったりするが、背骨に関しては、普通の人の観察眼では分からないようにさりげなく歩き、手足腕脚を動かしたり、ピッチングやバッティング動作や、振り向いたりする動きの中で、いわば全過程の中で、ルースニングし続けているのが分かる。
 
 というわけで垂軸、体軸共に正確かつ強力な大谷だから、体幹ローテーションがMLB最高なのは当然として、背骨の椎骨の回旋筋が働いているということは、肩関節と股関節、そして肩甲骨と腸骨の連動(下図)が、脊椎の最深層を動かし、2種類の軸を巻き込んで行われているわけだ。
 

肩関節と股関節の連動を「肩転連動」、肩甲骨と腸骨の連動を「甲腸連動」という。それぞれクロスとストレートの連動性を持っている。
 
 これを「脊椎連動」「脊椎軸連動」というが、これは全盛時のイチロー、全盛時のリオネル・メッシ、全盛時のマイケル・ジョーダンあたりの超絶的なパフォーマンスにしか見出すことの難しい、メカニズムなのだ(もっともウサイン・ボルトの9秒58のメカニズムは、またさらに奥が深いが)。
 
 今後の課題の一つは、垂軸と体軸の乖離がどこまで埋められるかだが、これは難しい。現在絶頂状態では完全一致にかなり接近することがあるが、常時完全一致するまでには余程の上達進化をすることが必要だ。
 
 他には、股関節の中心化と仙腸関節の開閉、股関節のW縦ロール、内転筋軸、全方向均等軸呼吸、猛獣腕脚振など、実に全身に多様な優れたファクターが育ちつつある。今後の上達、進化が素晴らしく楽しみな、大谷である。課題と伸びしろと時間は十分過ぎるほどあるので、ぜひ急ぐことなくジックリと取り組んで欲しい。
 
 ルースニング最深の「セル・ルースニング」、垂軸と体軸の完全一致「垂体軸一致」はMLB史上まだ誰も到達していないし、また全脊椎の両サイドである脊側を割って、縦割りされた2つの「左右側体」を自由自在にズラシ扱う「割脊」も、まだこれからのMLB史上の課題だ。
 
 これら「垂体軸一致」と「割脊」そして最根底を担う「セル・ルースニング」が達成できた時、大谷は本当の宇宙人=究極の地球人になっているのかもしれない。
 
 人間のパフォーマンスというものは、優れれば優れるほどその中身、つまりそのメカニズムの構造は巨大化し、そのファクターは厖大な数にのぼるようになる。そしてスポーツアスリートでは、目に映るその姿と動きは美しいものになる。さらに優れれば、その人柄も豊かで丁寧で己には厳しく人には温かく、人生そのものに誠実になる。大谷のパフォーマンスのメカニズムを構成するファクターが、ざっと挙げただけでこれほどの数になるのは、そのためだ。
 今回は、カンゼン社のサイトに機会をいただき、その一部を掲載させていただけたが、残された大谷の厖大なファクターについては、筆者自身のサイト(高度運動科学トレーニング動画サイト https://douga.undoukagakusouken.co.jp/)が最近できたので、時間をつくって一つひとつ丁寧にその解析をお届けできれば、と思っている。
 
 

 
『背骨が通れば、パフォーマンスが上がる!』
高岡英夫著(運動科学総合研究所所長)
 
自身の潜在能力(ポテンシャル)を一気に引き上げる究極奥義
26個の背骨一つひとつの自由度を高めて、軸を形成し、
肩甲骨と股関節を”脊椎連動”させる!!
 
 
世界のトップ・オブ・トップがハイパフォーマンスを生み出す
背骨が通ることで、アスリートとして至高の本質力が整う!
 
 
高岡英夫(たかおか・ひでお)
運動科学者、高度能力学者、「ゆる」開発者。運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長。東京大学卒業後、同大学院教育学研究科を修了。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、企業経営者、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」をはじめ「身体意識開発法」「総合呼吸法」「ゆるケアサイズ」など多くの「YURUPRACTICE(ゆるプラクティス)」を開発。多くの人々に支持されている。東日本大震災後は復興支援のため、ゆる体操プロジェクトを指揮し、自らも被災地で指導に取り組む。
著書は、『肩甲骨が立てば、パフォーマンスは上がる!』『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』『高岡式超最強の疲労回復法』(小社)、『究極の身体』(講談社)、『サッカー球軸トレーニング 日本サッカー本気で世界一になれる計画』(世界文化社)、『脳と体の疲れを取って健康になる決定版 ゆる体操』(PHP研究所)など、100冊を超える。
高岡英夫実演指導のトレーニング法が動画で学べる「高度運動科学トレーニング動画サイト」https://douga.undoukagakusouken.co.jp/

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