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【小島克典の「通訳はみだし日記」】プレゼントに込めた思い――もうひとつの風物詩〝メジャーリーガーの奥さまたちのプレーオフ〟

ベースボールチャンネルは、毎週火曜日に、横浜ベイスターズ、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ニューヨーク・メッツの3球団で通訳として活躍した小島克典氏による書き下ろし連載「通訳はみ出し日記」をスタートしました。連載3回目は、メジャーリーガーの奥さまたちが主役となる「プレーオフの舞台裏」について。セレブ妻ならではのびっくりハプニングが満載の、知られざる活動をご紹介します。

2014/10/14

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プレゼント交換の目的は、相手への敬意と〝おもてなし〟の心

 カージナルスなどで8年間プレーした田口壮氏の妻・恵美子さんは、著書『メジャーリーガーの女房』の中で、ある年のワールドシリーズのエピソードを紹介している。

 プレーオフの常連で、奥さんたちのギフト選びも手慣れたカージナルスの奥さま会が、ある年のワールドシリーズで相手チームの奥さんに用意したギフトは、有名ブランドのバッグに化粧品を詰めたセットだった。
 高価すぎず、安っぽくもなく、何より気の利いたプレゼントだ。

 ところがその年、相手チームは久々のワールドシリーズ進出で、選手はもとより彼らの奥さんや婚約者にも、プレーオフ経験者がほとんどいなかった。不慣れな奥さんたちが考えた末に用意したのが、大手スーパーで売っているような、お菓子の詰め合せバスケットだったという。

 カージナルスの奥さんたちが敵地のホテルにチェックインすると、それぞれの部屋にこのギフトがポツンと置かれていた。それを見た奥さんたちは「ワールドシリーズをなめてるわ!」と一蹴。

 結局、相手に贈る予定だったギフトは、自分たちで使ってしまったという(女性をプレゼントで怒らせるとあとが怖いのは、万国共通のようですね……)。

 確かにワールドシリーズの大舞台で「お菓子の詰め合わせ」は寂しい気もするが、そこには「奢りもあった気がする」と、のちに恵美子さんは綴っている。

 相手チームの奥さんも、初めてなりに考えた末にそのギフトを選んだことだろう。カージナルスの奥さんたちには、相手の立場まで考える余裕はなかったのかもしれない。
 奥さん会のプレゼント交換の基本概念は、長いペナントレースを勝ち残った相手へのリスペクトと、遠路はるばる敵地に駆け付けた家族を〝おもてなす〟気持ちだ。

 一期一会が重なり合うプレーオフの舞台裏では、長い人生のほんの一瞬の時間を、野球選手の妻として過ごす幸運に恵まれた彼女たちが、こうしてご主人の活躍に歓喜を上げ、ライバルチームを称え合っている。

 今年のオフはぜひとも青木選手の奥さまに、取材をしてみたいものだ。

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