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サバシア、クレメンス、ムシーナ、ペティット以上の男。ヤンキースが黒田博樹を高く評価する理由

今季、ポストシーズン進出がかなわなかったヤンキース。田中将大が大きく注目される中、もう一人の日本人エース・黒田博樹は1年間ローテーションを守り切った。引退や日本球界復帰などの噂も流れるが、"ヤンキース投手歴代最優秀防御率"の男・黒田に対するヤンキースの評価は全く揺るがない。

2014/10/06

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黒田に対する、ヤンキース首脳陣の高い評価

 投手不利の傾向は、09年に新スタジアムが建設されてからより強くなっている。そういった意味でも、12年に37歳でヤンキースに加入した黒田が残す防御率は、驚異的といっていい。広島時代11年間の防御率3・69を大きく下回ってもいる。

 今季の黒田には、首脳陣の1シーズンを見通した起用法も大きな助けとなった。昨年は後半戦に息切れし、9月は0勝3敗、防御率5・70と散々だった。今季の9月は2勝1敗、防御率2・81。

 ラリー・ロスチャイルド投手コーチは「エキストラ・レスト(追加の休養)さえ与えれば、彼は本来の投球を年間通じて見せられると思った」と説明する。

 黒田は後半戦開幕をスキップし、中8日でリスタート。さらに8月には中6日が1度、中5日が2度と、登板間隔を空けて起用された。中8日を打診され、黒田自身の希望で中6日で登板したこともあった。

 肘の故障で離脱する投手が目立った今季の大リーグで、「エキストラ・レスト」を挟んだ起用は調整に役立つだけでなく、故障防止にもつながるという考えが浸透しつつある。

 その首脳陣。ジョー・ジラルディ監督とブライアン・キャッシュマンGMは、1年契約を満了しオフにFAとなる黒田の残留へ、ラブコールを送っている。辛口で知られるニューヨークの地元メディアも、故障者が続いた先発投手陣でただ一人開幕からローテーションを守り抜いた右腕を高く評価する。

 黒田はここ3年間、オフには引退か、現役続行かで悩み抜き、ヤンキースとの1年契約を重ねてきた。

「ケガなくローテーションでまわれたのは満足している。(去就は)自分なりに考えながら決めないといけない。例年以上に難しいですね」とシーズン終了後に話した右腕。
 来季は40歳で迎えるシーズンとなる。ちまたでは現役引退や、古巣・広島への復帰など噂話が飛び交うのも、もはや黒田のオフの風物詩と言っていい。

 それでも黒田は、不惑のヤンキーとして来春もピンストライプのユニホームに袖を通すだろう。

 自分を理解し、尊重した起用をしてくれる首脳陣がいる。隠れがちな投手としての価値を見出してくれるメディアと、目の肥えたファンがいる。

 3年ぶりのポストシーズン進出は至上命題となる来季。「YANKEE PRIDE」抜きに、そのミッション・クリアは見えてこない。

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