大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



マリナーズ・菊池雄星、ゾーン勝負の5回74球。7失点も意図的に速球動かす新スタイルへの挑戦か【雄星リポート第21戦】

シアトル・マリナーズの菊池雄星投手が21日(日本時間22日)、本拠地でのロサンゼルス・エンゼルス戦に今季21試合目の先発登板。5回を投げて9安打、2本塁打を浴びるなど7失点と打ち込まれ7敗目(4勝)を喫した。大谷との対戦は3打数1安打1三振と抑えたが、1得点を献上した。

2019/07/22

text By

photo

Getty Images



対トラウトでは奏功、菊池の変化は“動く球”

 変化球を安打にされたのは、5回のアップトンのみ。全てストレートを痛打された。この内容にこそ、菊池の変化が垣間見える。
 
 菊池のストレートは、この日、微妙に動いていた。
 いや、ストレートが動くのは今シーズン、何度も見られたのだが、今回ばかりはやや意図的であったのではないか。
 
 菊池の持ち味はフォーシームのストレートだ。メジャーリーグに行ってからは、このボールを高めに投げ込んでいくことで、スライダー、カーブなどの変化球を織り交ぜピッチングをデザインしていく。好投したほとんどの試合はコンビネーションがうまく行っている時だ。
 
 だが、時として、ボールが動いてしまう癖は、体調の上下動とともに、しばしば見られていた。この日の菊池を見ると、これまでと違って、あまり力投しすぎない程度に投げているようにさえ映った。もちろん、球速を落としているわけではない。その違いだ。
 
 例えば、1回表、トラウトを一塁ゴロに打ち取っているが、どん詰まりに抑えられたのは、インコースに食い込んでいくボールだったからだ。
 
 つまり、この日の菊池のストレートは右打者には食い込み気味、左打者にはやや逃げるような軌道を描いていたのだ。
 
 トラウトの第1打席は成功例での打ち取り方だが、これがいい方、悪い方の両面に出るところがあり、それが雌雄を分けた。
 
 プホルスの本塁打はボールが抜けて、それを捉えられたものだ。グッドウィンには完全に打たれたが、3失点してからの4回の不運な痛打はまさにストレートが動いた中での誤差が生んだ打球ばかりだった。
 
 先にも書いたように、サードゴロの内野安打が2つあり、右翼の飛球がアンラッキーなところに落ちた。これは偶発的に生まれたのではなく、菊池のボールがそういう打球を打たせていた。
 
 5回を投げて9安打7失点は、完全な敗北だ。
 しかし、球数が示しているように、ストライクゾーンで勝負していくなかでのもう一つの打ち取り方を見出そうとしていたようにさえ見えた。あまり力投をせず、フォーシームは要所で投げるまでにとどめて、打ち取っていくというような。
 
 もっとも、菊池に直接、問い合わせたわけではないから、彼の意図は現時点では分からない。だが、この日の結果をどう受け止めるかは、今後の彼のピッチングに変化を与えるかもしれない。7失点しながらも、動く球に手応えを感じたのか、それとも、ボールが動いたのはただの偶然で、これからもフォーシームを多投していこうとするのか。
 
 長期契約の中で、日々、何かを感じ取ろうとしているのが今の菊池だ。
 果たして、この日の登板は、今後に向けてどのような位置付けになるのか、見ていきたいと思う。
  
 
氏原英明

1 2