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本当に大丈夫? それでも懸念される右肘のリスク。田中将大に突き付けられた2年目への宿題

9月27日の敵地でのレッドソックス戦に先発し、今季最短となる1回2/3を7安打7失点でKOされた。肘の故障から先発に復帰しての2戦目、ヤンキース・田中将大投手の今季ラスト登板は来季に向けて課題の残る内容となった。

2014/09/29

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常に付きまとう、肘のリスク

 肘の靱帯部分断裂を抱えながら、長い間投げ抜いたことで有名な投手に、カージナルスのエース・ウェインライトがいる。高校時代に右肘靱帯部分断裂と診断されたが、休養とトレーニングを重ねたことで05年にメジャーデビュー。09年には19勝で最多勝、10年には大台の20勝を挙げた。
 
 その鉄腕も、結局11年に完全断裂して、靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けた。そして、昨年再び19勝で最多勝、今季も20勝を挙げ、完全復活を果たしている。
 
 田中が今回受けたPRP(多血小板血しょう)注射など、再生治療の研究は進んではいるが、一度損傷した靱帯の完治は不可能とも言われる。
 
 このオフの手術の可能性はこれで遠のいたかもしれないが、常にメジャーの舞台で投げ続けていれば、そう遠くない将来に、リスクが再浮上してきても不思議ではない。
 
 そして、プロの投手である以上、そのリスクは田中だけに限った話ではない。
 
 チームにとっても大事なのは、コントロールなどできない将来的な手術のリスクを管理することよりも、まずは覇権奪回を目指す来季の開幕から全力で働けるのか、どうか。その点については、首脳陣はある程度の手応えを得たとみていい。
 
 指揮官、投手コーチとも悲観した表情は見せなかった。田中は登板の翌28日には軽めのキャッチボールを行っており、深いダメージはのぞかせなかった。
 
 快進撃を見せた田中のメジャー1年目は20試合で13勝5敗、防御率2.77という成績に終わり、規定投球回には到達できなかった。田中は登板後、自身のブログで肘に不安はないことを再度強調した上で「ただ単に僕の実力、技術不足!」「オフにまたしっかり鍛え直したい」と記した。
 
 肘への負担を少しでも減らすよう、患部周辺はもちろん、肩回りや下半身の強化が必要となる。メジャーのタフな1年間を戦い抜くために――。
 
 深い傷も負ったこのルーキーイヤーの経験を、どう糧とできるか。
 
 2年目以降を左右する大事なオフシーズン。ヤンキースのシーズンは無念の内に終わりを告げたが、田中の完全復活への本当の戦いは、これからなのかもしれない。

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