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本塁打も虚しく映る…ガラガラの観客席でなぜ儲かるのか? エンゼルスの球団経営が順調なワケ

2019/05/25

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チーム低迷の裏で大健闘。客単価の向上、高額契約の売り込みも

 メジャー球団にとって、本拠地球場におけるチケット、飲食物、グッズなどの販売は最大の収入源の1つだ。巨大な金額を生み出すテレビの放映権やネット収入はMLB本部が一括して管理・運用しており、各球団には「リーグ全体の収入」からMLB本部の取り分を差し引いた額が均等で分配されるに過ぎないからだ。

 その重要な観客動員数があの程度でエンゼルスの経営はやっていけるのか、という声を聞くことがある。もっともな疑問ではあるが、実際のところ、エンゼルスの財務状況はMLBの中でも決して悪くはない。経済専門誌『フォーブス』の試算によれば、エンゼルスの現在資産価値は19億ドル(約2090億円)でリーグ8位だ。今年予想される総収益は3億4800万ドル(約383億円)で、1900万ドル(約21億円)の営業利益を見込んでいる。
 
 ちなみに同じく『フォーブス』の試算によれば、球団資産価値のトップ3はニューヨーク・ヤンキース、ロサンゼルス・ドジャース、ボストン・レッドソックスといった人気チームが続き、ワースト1位はマイアミ・マーリンズだ。マーリンズの資産価値はヤンキースの約5分の1にしかならない。
 
 エンゼルスの経営もずっと順調であったわけではない。2012-13年の営業利益は赤字を計上し、その時点の資産価値も現在の半分以下だった。黒字に転じたのは2014年からで、それ以降は右肩上がりで成長を続けている。2014年以来1度もプレイオフに進出できていないチーム成績からすると大健闘と呼んでいい。
 
 その間、観客動員数自体にはさほど大きな変化はなかった。むしろ大きく変わったのはチケット価格だ。2013年に前年度19.71ドル(約2100円)だった平均価格を一気に27.54ドル(約3000円)へと約40%近い大幅な値上げを行っている(2018年は30.26ドル、約3300円)。当時の報道にはエンゼルス経営陣は高級化路線に走ったと批判するものが多かったが、それでも観客数は大きく減らなかったわけだから、当然客単価が上がった分だけ収益は向上した。
 
 単なる値上げに留まらず、固定収入をもたらすシーズンチケットの割合を増やし、同じ席であっても対戦相手や時期から需要を予測して価格を変動させ、さらにはスイートルームなどの超高額契約の売込みにも余念がない。
 
 エンゼルスに限った話ではなく、このような営業努力はメジャーの他球団も行っている。野球観戦は昔も今も家族連れの娯楽であり続けているものの、安いチケットを大量に売る方式は完全に過去のものとなっていると言えるだろう。

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