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トレーニングは広場でタイヤ叩き。グラウンドはデコボコが当たり前。それでもMLB選手が育つ理由とは【ドミニカ野球奮闘記#2】

外国に籍を置くMLB選手のうち、およそ4割がドミニカ人選手と言われている。数多くの選手を輩出しているドミニカの野球アカデミーには、日本とは異なる育成環境がある。異国の地に飛び込んだ日本人の少年を追いながら、スター選手が育つ土壌を探る。

2019/05/22

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高橋康光



“プロを目指すなら捕手がいいぞ”


 指導者からのパワハラにより高校野球部を退部、そして高校も中退し、楽しい野球を求め、自身の未来を切り拓くために、ドミニカ共和国の野球アカデミーに飛び込んだ17歳の米内山凱(よねうちやま・かい)君。ドミニカ入りして1カ月が過ぎ、徐々に生活にも慣れてきたようだ。
 
 元読売ジャイアンツの育成選手であったノエル・ウレーニャ氏が運営するアカデミーで汗を流し、スペイン語学校にも通う彼の生活に、週5回の朝のフィジカルトレーニングという新たなルーティンが加わった。凱君が参加するKTTというトレーニングチームには野球以外の種目のアスリートも参加しているが、そのメンバーの中に、かつて西武ライオンズ、オリックス・バファローズで活躍したエステバン・ヘルマン氏も在籍している。
 
 現役から退き、現在はドミニカ共和国野球連盟の理事を務めているヘルマン氏だが、今もトレーニングを続け、現役時代さながらのボディを保っている。ともに汗を流す凱君もその姿に大いに刺激を受けている。「色々とアドバイスを下さいますが、“プロを目指すなら捕手がいいぞ”と言われています。メキシコはじめ、中南米のリーグでは常に捕手が不足しているようで、チャンスが広がるということです。過去に2年ほど捕手でプレーしたことはありますが、アドバイスの通りに改めて捕手にチャレンジしてみようと思っています」と凱君は言う。
 
 このフィジカルトレーニングは最新の設備が整ったジムではなく、屋外の広場で行われている。そして、その内容もハンマーでタイヤを叩いたり、チューブを使ったトレーニングなど、いたってシンプルなものだ。決して恵まれているとはいえない条件だが、それは日本人の発想であって、ドミニカ人にとってはごく普通の環境だ。野球の面でも同様に、デコボコのグラウンドでのプレーが当たり前という中で育つことで、「こちらの選手はイレギュラーの処理がとても上手です」と凱君が言うようなプレーヤーが出来上がっていくのだ。

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