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米高校野球では前腕の骨がない選手もプレー、視覚障害者野球はイタリアが第一人者。日本と世界、障害者野球の現在地とは

 両腕の橈骨(とうこつ)を持たずに生まれた16歳の少年がアメリカ合衆国の高校野球でプレーしていることが話題となっている。公式サイト『MLB.com』は1日(日本時間2日)、イリノイ州の高校でプレーするマイショーン・ドージャー君を紹介する記事を発表した。世界中で親しまれる野球だが、全ての子供たちが野球をプレーできる環境作りはまだまだ発展途上のようだ。

2019/05/06

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日本国内の障害者野球の現状は? 軟式は世界トップクラスも…

 次に、日本国内での取り組みを見ていこう。最もよく知られるのは1993年に発足し、現在37チーム・958人の選手が所属する日本身体障害者野球連盟だ。軟式野球をベースに、走ることが得意でない選手や、片手でバットを扱う選手などに向け、ゲームを公平に楽しむための特殊ルールを制定している。春の選抜大会・秋の選手権大会を始め、15以上の主要な大会を毎年開催する他、「もう一つのWBC」と呼ばれる世界身体障害者野球日本大会も2006年から4年に1度開催しており、日本は過去4度の大会で3度の世界一に輝いている。
 
 ハイレベルな障害者野球に比べ、下火となってしまっているのが視覚障害を持つ人や女性のプレーできる環境だ。1951年から1966年、1997年から2016年の期間に開催された全国盲学校野球大会は資金不足から、2016年以降の開催を見送り。グランドソフトボールのルールを採用した同大会には多くの盲学校が参加したが、現在は厳しい状況が続いている。
 
 武蔵野プリティープリンセスは、2015年に設立された、日本初の知的障害を持つ女性のみが所属するソフトボールのチームだ。障害者ソフトボールの分野では男子の活動はこれまでにもあったものの、男性と女性が混合して均衡したレベルを保つルールの整備が追い付かず、女性がプレーする環境は非常に限られていた。プリティープリンセスの今後の発展と、他チームの発足に期待したい。
 
 生まれつき、事故、病気、その他の様々な理由から、野球をプレーできなくなること。それは、現在野球を愛する全ての人の身に今日起きてもおかしくはないことだ。華やかなMLBやプロ野球の世界を楽しむだけに留まらず、国境を越え、困難を越えて白球が繋ぐ障害者野球の世界に思いを寄せてみる時間を取ってみてほしい。

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