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いまだ契約未定。イチローに衰えはあるのか? セイバーメトリクスから現状の立ち位置を分析

2018/02/15

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DELTA



加齢に伴い徐々にパフォーマンスを落とすも、2016年は見事な復活


 次に加齢の影響が、イチローの選手としての価値にどの程度のインパクトを与えているかを見ていきたい。2つ目の図はMLBに移籍して以降、それぞれのシーズンで攻撃、守備でどれだけリーグ平均を上回ったかを表したものだ。
 
 攻撃の指標として使用するwRC+はリーグ平均を100とした1打席あたりの打者の傑出度を表したもので、130ならばその打者はリーグ平均レベルの打者の1.3倍の貢献を見せたといえる。守備指標として使用するUZRは、同ポジションを同じだけ守った平均的な守備者に比べてどれだけ失点を防いだかを表したものだ。wRC+は平均を100、UZRは0に設定している。
 
 2001年から2010年までのイチローは攻守ともに1度も平均を割ることがなく、長期間にわたり高いレベルを維持している。この10年間のイチローはMLB全体の中で紛れもないトップクラスの選手だった。特にシーズン最多安打記録を更新した2004年は攻撃面でキャリアハイ、守備面でもキャリア2番目の数字を残している。
 
 しかし、2011年に攻守ともに平均を割って以降は2000年代並のクオリティを取り戻すことはできていない。攻撃面で違いを生み出せる選手ではなくなり、かつてはリーグ平均を大きく上回るクオリティを見せていた外野守備も右肩下がりの傾向で、近年は平均レベルにとどまっている。
 
 またスピードの衰えも顕著だ。かつては放ったゴロのうち10~15%を内野安打にしていたが、その確率が近年は低迷し7~8%にまで下がっている。リーグ平均が6.5%前後であるためまだ平均よりは多いが、持ち味が失われつつあるといっていい。
 
 だがイチローは加齢に伴いただパフォーマンスを落としていったわけではない。2015年、マーリンズ加入初年度のこの年は打率.229と攻撃面でキャリアワーストの成績に終わった。このときイチローは42歳を迎えていたため、多くの人は引退が近づいていると感じたはずだ。しかしこの翌年、打率.291、wRC+も100と2010年以来、リーグ平均レベルにまで数字を戻した。衰えに抗うパフォーマンスを見せたのだ。
 

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