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イチロー、新天地で指導者の役割も――孤高のヒットメーカーが、最高のムードメーカーへ

マーリンズと1年契約を結んだイチロー。2月24日のキャンプインから、若い選手とコミュニケーションをとり、早速チームに溶け込んでいる。

2015/03/02

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この環境下でのチャレンジを楽しんでいる

 かつての姿からは想像もできなかった。マリナーズ時代はチーム最高俸の、文字通り球団の顔。新人なんかは気軽に近寄れない、アンタッチャブルなオーラを放ってさえいた。
 中でも衝撃的だったのは08年のイチローへの暴行未遂事件報道。屈辱的な100敗を喫したチームの敗因を、地元紙シアトル・タイムズが9月末に特集。その中で「イチローに対して暴力を企てた選手さえいた」と報じた。
 記事は球団関係者の証言を元に構成され、チームメイトの一部が記録中心のプレースタイルを「自分勝手」だとして、暴行計画を練っていたと報じた。
 当時のジム・リグルマン監督は「そんな話は聞いたことがないし、イチローは常に試合に対し最高の準備をしている」と、逆にイチローのスタイルを称賛し、真偽のほどは闇に流れた。イチローの野球に対する真摯な態度は疑うべくもない。ただ、こういう報道が出るように、当時一部の選手たちとの間に溝があったことは想像に難くない。

 ヤンキースでも名門球団で、シーズン途中に加入した外様でもあり、クラブハウス内でリーダーシップをとることはなかった。周りには完成された選手たちが大勢いた。
 それが新天地では、自ら進んで若手たちに門戸を開いている。ポテンシャルを秘めたマーリンズで、何よりも足りないのは経験。それを伝え、見て感じさせることで、イチローなりのやり方でチームに貢献することができるということだろう。

 入団会見でも話した通り、レギュラーへの道のりが険しいことは承知している。「もちろん(第4の外野手という立場は)受け入れます。現時点では。ただ去年は5番目でしたから、ずっといい」とあらためて語ったという。
 42歳を迎えるというシーズンに、野手でメジャーのグラウンドに立つことの価値を、イチロー自身がよくわかっている。そして、そんな自分にチームが何を求めているのかも――。
 キャンプに収まらず、シーズン中もマーリンズ若手たちの発見は続くはずだ。練習への準備、試合への準備。走塁、守備での緻密さと野球偏差値の高さ。連敗、あるいは連勝が続いた時の心構え……。
 スポンジのような若手がそろったチームへの波及効果は計り知れない。

 初のナリーグへの移籍、第4の外野手という苦しい立場からの再起。困難なチャレンジだろうと、イチローがやるべきことは今までと何も変わらない。

 そして、プロ24年目のメジャー現役最年長野手は、この環境下でのチャレンジを何よりも楽しんでいる。

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