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マーリンズは外野を4人で回す? イチローに十分出場のチャンスあり!【田口壮の眼 第3回】

オリックス時代にはイチローとともに日本一に輝き、その後メジャーリーグではマイナーからすさまじい努力でメジャー昇格を果たし、カージナルス、フィリーズで世界一に輝いた野球解説者・評論家の田口壮氏。そんな田口氏に2015年のMLBをたっぷり語ってもらいました。第3回はイチローをはじめ、日本人野手について伺いました。

2015/02/23

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バックハンドを制する者は世界を制する

――今年は、阪神の鳥谷敬がMLBに挑戦すると宣言しましたが、結局行きませんでした。NPBの内野手のMLBでの評価の低さはこのまま固定してしまうのでしょうか?
 
田口 今のままならそうですね。中島裕之選手の場合は不運だったと思います。僕は8年間アメリカで野球をやって、それぞれのチームがどんな特徴をもっているかということがわかってきました。しかし何の情報もなくて、日本で集めた情報だけをもとに契約して、ふたを開けたらこんなチームだったのか? こんなGM、こんな監督だったのか、ということは起こりうることです。ほぼチャンスは与えてもらえなかった。彼はMLBで十分戦える選手です。川﨑選手にしても田中賢介選手にしてもレギュラーを獲れる選手です。「もっとチャンスを与えてくださ~い!」と声を大にして言いたいです。
 
――田口さんはNPBよりMLBの成績が良かった唯一の野手ですよね。
 
田口 速い球が好きだったからですかね。(笑)
 
――加藤豪将がヤンキースのプロスペクトの12位に上がっていますが、これから日本人野手がMLBに挑戦するのはこういう道しかないのでしょうか。
 
田口 そんなことはないとは思います。ただ、守り方の根本が違うのはどうしようもないことでしょう。外野手は大きく違わないが、内野手は全然違います。それに合わせて日本側がスタイルを変えるのか、変えないのかということを、我々が考えないといけません。MLBの野球のスタイルは変わらない。だとすると、日本が変えないといけない。じゃ、どうするか? プロに入ってからMLB向けに野球のスタイルを変えるとなると遅い気がします。アマチュア時代、子供時代が変われば変わってくるわけです。
 
――加藤豪選手がアメリカで学んだような野球の指導環境が日本で実現すれば、ということですね。
 
田口 そうです。これからの指導者の在り方が今、問われています。日本の野球関係者は、日米の内野手のスタイルの違いはわかっているはずです。あとはどこでどう折り合いをつけるかです。日本独自のスタイルを貫いていくのか、世界、アメリカで戦える選手を作っていくのか、岐路に立っていると思います。これは、アマチュアを含めての話。プロだけの話ではありません。小学生、中学生、高校生の間にどうやって教えるのか。それがないとMLBでは受け入れてもらえないのではないか、そんな気がしています。
 
――小さい頃からの教え方がポイントになる、と。
 
田口 僕はセントルイスにいるときに、外野の練習の合間に、内野の守備コーチとともに守備練習をしました。もともと内野手で入ったこともあって。興味があったんです。二遊間が一緒に練習しているときに、「僕も入れて」みたいに……。セントルイスにいた6年間、ずっと内野守備コーチと「ああでもない、こうでもない」とやってきました。そこで学んだのは、「バックハンドを制する者は世界を制する」ということなんです。
 
――桑田真澄氏も「これからはバックハンドでとることを指導しなければならない。正面で捕ることばかり考えてはだめだ、」と言っていました。
 
田口 要するに、「どこが正面なのか」「体の軸をブラさない」という話ですね。そういうことを含めて、日米の野球の「違い」をしっかり把握して、現場で実践しなければなりません。NPBがMLBから吸収できることはまだあるように思います。単なるスピードやパワーではなく、技術や野球の考え方も含めて、日米両方の野球をうまく調和できれば、世界が認める野球が確立できるのではないでしょうか。
 
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田口壮(たぐち・そう)
野球解説者/野球評論家
 
関西学院大学から1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。3年目の外野手転向を契機にレギュラーへ定着、イチローらとともに95年、96年のリーグ連覇(1996年は日本一)に貢献した。ゴールデングラブ賞を5度獲得。2002年MLBへ挑戦、セントルイス・カージナルスに入団する。その後フィラデルフィア・フィリーズ、シカゴ・カブスでプレー。2006年(カージナルス)、2008年(フィリーズ)で2度の世界一に輝く。2010年にオリックス・バファローズに復帰、2012年7月31日に引退を表明した。現在はNHKでMLBの野球解説などを担当している。TV出演を中心に、野球教室、講演、イベント出演など幅広く活動を展開している。
 
第4回は、2月25日更新予定です。

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