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田澤純一も申請したMLB年俸調停制度 NPBとは違う、明確な裁定【豊浦彰太郎のMLB on the Web】

田澤純一が年俸調停を申請した。MLBの調停制度は、NPBのそれとは異なり、契約促進や平均年俸の上昇に大きな効果を発揮している。その最大の理由は、妥協案を提示しない裁定方式にあると言える。

2015/01/15

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年俸調停を活用するMLB、一方のNPBは?

 この制度は、1972年の史上初の選手会ストライキを経て導入された。調停権はメジャーリーグ在籍期間が3年を超えた選手が得ることができる(一部、2年でこの権利を得るエリートもいる)。
 
 一般的にMLBの年俸の高騰は、1976年に導入されたフリーエージェント(FA)制度によるものだと考えられている。
 しかし、平均年俸を押し上げる効果は、FAより年俸調停のほうが大きいとする説も有力だ。その恩恵に浴する選手は、調停制度のほうが多いからだ。FAになる選手そのものは多いが、その中で複数球団による争奪戦になり、契約条件がつりあがるのは一部選手に限定されている。
 一方の調停では、最終的に聴聞会まで持ち込まれずとも、その存在ゆえに多くの選手が双方の主張の中間という成果を引き出すことができる。その結果、平均年俸は確実に上昇するのだ。
 
 NPBの場合、そもそも調停が申請されるケース自体が極めて限られている。
 歴史はMLBと同じくらい長いにもかかわらず、これまで7度しかない。
 
 今オフも中日の大島洋平が当初は申請も辞さずの姿勢を見せたものの、最後は球団主張の金額で契約している。残念ながら、この制度は事実上形骸化していると言ってもいいだろう。
 
 理由としては、「金銭を争うのは良くない」という精神的土壌や、折衷案の提示を認めている制度自体への信頼度が低いことも挙げられるのではないだろうか。
 こういう環境下では、調停に持ち込む可能性を示唆することすら「スター選手の特権」と考えられがちだ。この点においても、控え選手クラスでも躊躇なく調停を申請する(結果的に事前に妥結するが)MLBと大きな差異がある。
 
 話を田澤に戻す。レッドソックスのブルペンには、このオフ早々と2年契約を結んだ上原浩治が君臨するが、昨季8月に疲労を見せた40歳の体調は不安材料でもある。
 
 田澤は、いざという時の後継者候補と言えよう。
 個人的には『トレード・ルーモアズ』が予想する200万ドルは、田澤の実績からすると低すぎると思う。田澤の希望がどのあたりにあるかは定かではないが、球団側もそれなりに譲歩する姿勢を見せるのではないか。
 
出典:Pete Abraham(@PeteAbe) Twitter
“175 players file for salary arbitration”@ SB Nation by Brian Kilpatrick in Dec.14th 2015

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