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上原浩治に続く投手は出るか? MLBのクローザーに必要な〝マネーピッチ〟【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はMLBのクローザーについてだ。

2014/12/22

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クローザーは、〝絶対的〟な球種を習得する必要がある

 数字だけで見れば、クローザーはよく似たタイプの投手の集まりのように見えるが、実は打者の攻略法は投手によって全く違う。
 MLBには投手の球種別のデータを公開しているサイトがある(http://www.fangraphs.com/)。これをもとに30人のクローザーの球種を一覧してみよう。
 投球数に占める球種の比率と、ゴロアウト:フライアウトの比率、三振比率。球種の太字は最も多く使う球種だ。

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 先発投手は、球種がもっとばらけることが多い。長く投げる中で試合の途中で攻め方を変える必要があるからだ。しかし救援投手は一つのパターンで投げることが多いので球種はシンプルだ。

 セーブ王のロドニーはツーシームが武器であることがわかる。
 キンブレルは4シーム、つまり剛速球で攻める。奪三振率も高い。

 対照的にケンリー・ジャンセンはカッターが83.5%、そしてフライアウトが64.8%、打ちそこないのポップフライでアウトカウントを稼ぐのだ。
 ジョナサン・パベルホンは、スライダーとシンカーのふたつの球種で攻める。彼もポップフライを打たせる投手だ。

 人類最速男、チャップマンはフォーシームが7割近く。そして奪三振率は65.4%。要するに多くの打者は彼の球を前に飛ばすことさえできないのだ。

 ザック・ブリットンは前述のとおり最も球数が少ないが、その大部分がツーシーム、つまり「動く速球」だ。これでゴロの山を築く。効率的な投球の秘密はツーシームなのだ。

 上原浩治の球種は際立っている。MLBの投手が「ひじの故障につながる」と投げたがらないスプリットを駆使してアウトを稼いでいる。スプリットは1種類ではなく、握りやリリースの場所で変化を何種類も操れるという。
 そもそもスプリットはMLBでは日本人投手以外ほとんど投げない球種であることも大きいだろう。

 こうしてみると、MLBのクローザーはタフな上に、打者を仕留める必殺の球種=マネーピッチを持っていなければならないことがわかる。
 史上最高のクローザーと言われたマリアノ・リベラはカッターを89.2%も投げた。打者はカッターとわかっていても打てなかった。

 MLBのクローザーを目指すNPBの投手は、スタミナをつけることと、マネーピッチを磨くことが大事だと言えよう。

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