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元巨人クロマティに聞く、イチローがMLBで成功できた理由。日米通算記録に否定的、日本野球への懸念も

かつて巨人でプレーし、日本一に貢献したウォーレン・クロマティ氏は現在マイアミで余生を送っている。クロマティ氏がいるマイアミを訪れ、イチローがメジャーリーグで成功できた理由や日本野球に対して話を聞いた。

2016/08/20

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阿佐智



日本の野球は30年前のほうがレベルが高かった

 これに加え、イチローがメジャーで成功できたのは、高い順応性をもっていたことも大きいとクロマティは言う。
 
「僕が日本で成功できたのも一緒。プレーするのは同じ野球なんだけど、場所が違えば、プレースタイル、言葉、食事、習慣、あらゆるものが違う。だから行った先々でどう適応できるかも大事なことなんだ。その点、イチローはアメリカという場所に十分適応しているよ。言葉ももちろん、ヒップホップも好きらしいからね」
 
 手のひらを上下させながら各国の野球リーグのレベルを示すクロマティ氏。高く掲げた右の手のひらのすぐ下に左手を掲げ、「ここが日本」と言いながら、「コリアン」と言いながら、今度はその右手を左手のだいぶ下に移し替えた。しかし、「でもね」と続けた。
 
「野手について言えば、今は韓国人選手のほうが上じゃないかな。実際、韓国人選手は増えているだろ? 彼らのいいところは思い切りスイングすることなんだ。私が日本でやっている頃は、そういう選手が多かったよ。ピッチャーも思い切り投げこんできていたしね。とくに印象に残っているのは衣笠(祥雄・元広島)さん。その振りを最初に見た時はほれぼれしたね。彼なんかメジャーでプレーできるポテンシャルをもっていたと思うよ。でも、最近の日本のバッターはどうなんだろ? 私には、今より自分がプレーしていた30年前のほうがレベルが高かったように思えるね」
 
 クロマティ氏はこの夏も日本を訪問し、東日本大震災で被災した宮城県を慰問した。そこでは少年たちに野球の手ほどきもしたという。そこで言うのは、やはり「フルスイング」だ。
 
 3年ぶりにこの目で見たイチローは、42歳を迎えた今でも、メジャーの一流投手が投じる150キロ超の速球に振り負けることなく、外野へはじき返していた。日米野球のトップを見続けていたクロマティ氏は、自分と入れ替わりで日本球界に登場したイチローというレジェンドを見るにつけ、彼のような素材が複数いるに違いない日本の地をもう一度踏みたいと考えている。
 
「いつかは日本で指導者になりたいね」
 
 1989年、クロマティ氏はシーズン規定打席到達時に4割を超えるという快挙を成し遂げた。その後も彼は当然のごとく打席に立ち続け、結局.378でシーズンを終えたが、打率にこだわることなく安打を積み上げにいく姿勢はイチローのそれに通じる。
 
 彼が「第二のイチロー」を育てる時は果たして来るのだろうか。

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