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【MLB】イチロー、好球必打で蘇った打撃。四球率急上昇が意味するアプローチの変化

今季好調のイチローだが、数字の内容を比較するとこれまでとアプローチが違うことがわかる。

2016/07/26

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ストライクゾーンのスイング率低下が意味するもの

 イチローの四球率が上昇したのは、彼自身の打席におけるアプローチが変化したからに他ならない。過去15シーズンとも、イチローのP/PA(1打席あたりの被投球数)は4球に満たず、通算では3.61球だった。それが、今シーズンは4.12球に増えている。PITCHf/xのデータによると、イチローが今シーズン、ストライゾーン外の投球をスイングした割合は28.7%。これは、2007年以降(2006年以前はデータなし)にイチローが記録した数値では最も低い。

 しかも、ボール球に手を出すことが減っているだけではない。ストライクゾーン内のスイング率53.5%も、投球全体の40.7%も、過去にはなかった低さだ。今シーズンのイチローは、これまでよりも投球を選んでスイングしている。

 このアプローチなら、打率は低めでも水準以上の出塁率が残せる。一例を挙げると、今シーズンのブレット・ガードナー(ヤンキース)は、打率.260ながら出塁率.350を記録している。一方、2003年のイチローは打率.312、出塁率.352だった。打率が5分以上も違うのに出塁率がほぼ同じなのは、四球率の差が大きい。ガードナーの四球率11.1%に対し、2003年のイチローは5.0%だった。ちなみに、ISO(=長打率-打率。長打率よりパワーの有無を明確に示す)は.101と.124で、2003年のイチローが上回っている。

 今シーズンの数値が物語るイチローのアプローチが、これからも続いていくかについては、推移を見守りたい。一過性でない可能性は高いが、そう断定するのに207席は十分な数ではない。けれども、来シーズン以降も同様のアプローチなら、イチローはチームにとって有用な打者であり続けるはずだ。たとえ、打率が3割に届かなかったとしても――。

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