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オーストラリアの国内リーグもMLB傘下に――国際化戦略を推し進めるMLB【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。第19回目は、一番MLB選手を輩出している国はどこか、MLBの国勢調査を行ってみた。

2014/11/18

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国際色豊かになったMLB

 このところ11月は野球の国際大会を行うのが恒例行事になっている。昨年はアジアシリーズが台湾であった。
 今年は日本で日米野球、台湾で21Uワールドカップ、そしてドミニカではウィンターリーグが行われている。

 野球発祥の地、アメリカはオフシーズンを人材発掘と市場開拓の時期と位置付けている。中南米のウィンターリーグを支援するとともに、オーストラリアではMLB傘下のオーストラリアリーグがレギュラーシーズンを展開している。

 日本にMLBオールスターズを派遣するのも、アメリカから見ればマーケティング戦略の一環なのだ。国際化はこういう形で進行している。

 半世紀前のMLBでは、アメリカ国籍の選手は90%以上、他はアメリカの影響下にあったキューバ、メキシコ、そしてカナダの選手だった。
 しかし、以後、MLBは国際化戦略を強めていく。

 北米4大スポーツ(野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケー)のビジネスが巨大化し、国内の市場競争が激しくなるとともに外国でのマーケット開拓と人材開拓が必要になったからだ。ヒスパニック系の移民が増加したことも背景にあったと思われる。

 2014年のMLBの選手を国別にまとめた。国籍ではなく誕生国での分類となる。

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 今年、MLBでプレーした選手は1433人、このうち1079人はアメリカ生まれで75.3%にあたる。外国生まれの選手は24.7%だ。

 最も多いのはドミニカ共和国、次いでベネズエラ。スペイン語を話す中南米の国である。
 両国には、MLBがForeign Minor Leagueを設けており、MLB各球団がチームを持っている。ランクはルーキーリーグ。つまり最下級だがMLB球団と直結しており、ドミニカ共和国やベネズエラのリーグで活躍した選手は、すぐにアメリカのチームに引き上げられる。

 つまり、実質的に国境がないのだ。

 ドミニカ共和国にはベースボールアカデミーも設けられているので、基本的な教育も行われる。カープもアカデミーを設けている。またドラゴンズの森繁和ヘッドコーチは、ドミニカと強いネットワークを有し、有力選手を日本に紹介している。

 昨年、解説者だった森氏にお話を伺う機会があったが「ドミニカは単なる野球チームではなく教育システムが整備されていることが大きい。それにハングリーだ」と話していた。
 今季は中日の新人の又吉克樹がドミニカに派遣されている。

 キューバは、キューバ革命まで主要な人材供給地ではあったが、革命後はアメリカと国交を断絶。
 しかしキューバは野球を国技とし、アマチュア球界では最強を誇ってきた。

 キューバのトップクラスの選手は第三国を介してアメリカに亡命し、MLBに身を投じてきたのである。
 日米野球に来ているヤシエル・プイグなどキューバ選手の大部分は亡命選手だ。

 プエルトリコは、実は国ではなくアメリカ領の島だ。この地域からMLBに参加するうえでの障壁はない。イヴァン・ロドリゲス、ホルヘ・ポサダ、モリ―ナ三兄弟など名捕手の産地としても知られる。

 これら4カ国と他の中南米の国々は、選手の輩出数に差がある。野球の普及度は国によってまちまちである。

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