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日体大・辻孟彦コーチが150キロ投手を育てられる理由。「ひとりで練習できる選手」になることが大事【後編】

2021/07/20

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『練習をすることでスピードが伸びた』という実感を

 いいピッチングができているときに、「なぜこの球が投げられているのか」を考える習慣を付けておく。人間は、状態が悪くなるといろいろと考え出すことが多いが、それだけでは足りない。辻コーチは、ピッチャーの映像を見ながら、「この動きが良くなっているよな」というアドバイスをマンツーマンで行う。入学時と現在のフォームを見比べて、成長を可視化させることも多い。

「私がコーチに就いてから、入学時にもっとも速い球を投げていたのが松本航です。1年生で146キロを投げていました。そのほかのピッチャーを見ると、東妻勇輔(ロッテ)が142キロで、森博人(中日)が141キロ。アベレージで見れば130キロ台中盤から後半です。そこからトレーニングを積んで、2人ともに150キロを超えるストレートを投げるまでに成長しました。『練習をすることでスピードが伸びた』というつながりが大事で、これが実感できれば、個別練習にも意欲が生まれていきます」
 
 日体大には全体練習と個別練習があり、辻コーチは「全体練習=全員がうまくなる練習」「個別練習=個々の課題に合わせた練習」と位置付けている。「自主練習」とは似ているようで、違うものだ。
 
「個別練習は、かなり細かい設定をしています。ピッチャーひとりひとりと面談をしたうえで、『自分の課題はこれ。課題をこの日までにクリアするために、このメニューを1日何回やる』というシートを提出させています。1年生のうちはなかなか書けず、何回も書き直し。このやり取りを繰り返していくうちに、自分自身で課題と向き合う力が付くようになっていきます。上のレベルで活躍していくには、ひとりで練習できる選手にならなければいけませんから。指導者に『これをやりなさい』と強制されると、自分では『これは合っていないな』と思っても、なかなかやめられないものです。だから、自分で必要なことを選ぶ力を付けさせています」
 
 個別練習で自らプログラムを組めるように、1年生のうちにさまざまなドリルの狙いややり方を丁寧に説明している。まずは引き出しの数を増やし、一通り実践していく中で、取捨選択する力を磨いていく。
 
 辻コーチが提唱するドリルはボールを一切使わない。ボールを投げない中で、投球フォームにつながる体の使い方を覚えていく。
 
「ボールを投げてしまうと、投げているボールの結果にひきずられて、フォームの改善にまで意識が向かなくなります。フォームを改善するには、ボールを投げないこと。そのほうが、体の使い方に意識を向けやすくなる。投げすぎることによる、ヒジや肩への負担を軽減することもできます」
 
(辻コーチが提唱するドリルはこちらから)
 
 
辻孟彦(つじたけひこ)
1989年生まれ、京都府出身。京都外大西高から日本体育大学へ進学。4年春に首都大学リーグ戦で優勝、MVPに輝く。2011年、中日ドラゴンズにドラフト4巡目指名を受け入団。2014年に現役を引退、2015年より日体大の投手コーチとして指導者の道を歩む。これまで松本航、東妻勇輔、吉田大喜、森博人をプロへ送り出した。2018年から日本体育大学大学院コーチング学専攻、2020年3月に修士(コーチング学)の学位を取得。
 
大利実

【書誌情報】

『高校野球界の監督がここまで明かす! 投球技術の極意』


(著者:大利実/280ページ/四六判/1700円+税)
「投球指導」「投手攻略」マル秘上達メソッド
 
【収録高校】 常総学院/島田直也監督 県立大崎/清水央彦監督 八戸工大一/長谷川菊雄監督 立花学園/志賀正啓監督 三重・海星/葛原美峰アドバイザー
 
【日体大】 辻孟彦コーチ
 
特別収録 プロが語る『投球論』 【制球力向上】吉見一起(元中日)【捕球技術】谷繁元信(元横浜・中日)
 
 
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高校野球界の監督がここまで明かす! 投球技術の極意

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