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勝ちを目指すことに意味がある。「打撃伝道師」佐相監督が語る激戦区神奈川を勝ち抜く指導論<Part3>

昨年、夏としては初のベスト4入りを果たした県立相模原。強豪校の激戦区神奈川でいかにして勝ちあがっていったのか。「打撃伝道師」と呼ばれる佐相眞澄監督流の指導論をまとめた一冊、『打撃伝道師 神奈川から甲子園へ――県立相模原で説く「コツ」の教え』(佐相眞澄著)から一部抜粋で公開。

2020/02/25

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負けることに価値を見出せるように

 新チームのスタートは、3年生が負けた翌日から始動することが多い。昨夏は準決勝まで勝ち進んだこともあり、翌日から4泊5日の長野遠征に出発した。「大変ですね」と言われることもあったが、次の代がすぐに待っているわけで、センバツをかけた秋の大会も目の前にある。監督として休むわけにはいかない。
 
 2017年夏に3回戦で城山高校に3対7で負けたときにも、翌日からスタートしたが、このときは3年生も練習に参加させた。正直に言えば、持っている力を発揮できずに終わった、不完全燃焼の夏だった。選手たちも同じ気持ちだったはずだ。モヤモヤした気持ちで受験勉強に向かうよりも、グラウンドで区切りをつけてほしかったので、彼らにはこんな話をした。「高校野球で成功したことも失敗したことも、すべて1、2年生に教えてくれ。今日の練習は、お前らが全部見てくれ」 
 
 監督があれこれ話すよりも、身近な先輩が話す体験談のほうが生きることが多い。この代の存在があって、2018年のベスト8、2019年のベスト4につながっていったのだと思う。競技スポーツなのだから、どこかで負ける。よく言われることだが、一度も負けずに夏を終えるのは1校しかないのだ。だからこそ、負けることに価値を見出せるように、本気で勝利を目指していく。
 
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書籍情報

『打撃伝道師 神奈川から甲子園へ――県立相模原で説く「コツ」の教え』
定価:本体1600円+税
 
【昨年夏の甲子園、神奈川大会で横浜を撃破して話題に!】
 
激戦区・神奈川で強豪私学に〝打ち勝つ〟進学校
束の力で大きな成果を出す
チームを強くし、強い“個”を育てる指導論
 
スポーツ推薦なし、大所帯の部員数、短い練習時間
限られた環境下で、いかに効率のいい取り組みができるか
 
横浜、東海大相模、慶應義塾、桐光学園
神奈川の『四天王』を倒すには、打ち勝つしかない
 
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打撃伝道師 神奈川から甲子園へ――県立相模原で説く「コツ」の教え
 
 
【著者紹介】
県立相模原高等学校教諭
佐相眞澄(さそう・ますみ)
1958年8月31日生まれ、神奈川県相模原市出身。法政二高から日本体育大へ進学。強打の外野手として大学4年時に明治神宮大会優勝を果たした。卒業後は相模原市立新町中から大沢中、東林中に赴任。大沢中では1992年に全日本少年軟式野球大会で3位。東林中では1998年の全国中学校軟式野球大で3位など数々の成果を挙げた。2005年に川崎北高の監督に就任すると県立校ながら、打ち勝つ野球で2007年秋の県大会でベスト4。2012年に県立相模原高に着任。2014年夏にベスト8、同年秋にベスト4、2015年春は準優勝に導き、同校初の関東大会に出場へ導く。2019年夏はノーシードで勝ち上がり、準々決勝では横浜を打撃戦で撃破し創部初のベスト4へ進出。甲子園常連校を倒した公立校として、大きな話題を呼んだ。

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