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【第1回】ベースボールの本質は祖国にあり。 米ピッツバーグ『世界一野球を”楽しむ”大会』現地リポート

 高校生の酷使問題、プロ野球における指導者の暴力問題など、暗いニュースが続く日本野球界。岐路に立つ今、野球の一つの本質である”楽しむ”という原点に立ち返り、現状を見つめなおすべきかもしれない。そのヒントは、米ペンシルバニア州ピッツバーグにある小さな街、フリーポートにあった。今年で25年目となる、野球を通じた国際交流を目的とする大会から、現地リポートをお届けする。初回となる今回は大会の概要紹介だ。

2019/08/29

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佐藤温

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優勝のない、国際大会

 フリーポート・インターナショナル・ベースボール・インビテーショナル(FIBI)は、地元企業の協賛や住人のボランティアによって運営される小さな国際大会だ。今年はアメリカ、プエルトリコ、オーストラリア、そして日本からチームや選手が参加し、7月下旬に5日間にわたって試合を行った。この大会の最大の特徴は、優勝という概念がないところだ。今年は18チームが参加したが、いずれのチームも勝利を最優先することはない。野球を楽しくプレーし、交流することに重点を置いているのだ。
 
 すでに現役を退いた選手たちによる「オールド・タイマー・マッチ」や、「チーム・アメリカvsチーム・インターナショナル」、ホームランダービーなども行われ、大会を盛り上げる。球場ではMLBさながらにホットドッグや軽食、飲み物やTシャツなどのグッズまで販売されている。最終日には大がかりな花火が打ち上げられるなど、単なる野球大会にとどまらず、地元のお祭りのような存在なのである。
 
 試合内容を見れば、決してハイレベルな展開ばかりではない。エラー、フォアボールを連発してしまったり、何もできずに三振して帰ってくる選手もいる。日程も終盤に入ると、素人投手同士の投げ合いも増える。15人のチームなら、打順が15番まであったりする。だが、誰もミスを責めない雰囲気は、新鮮なものがある。フィールドに飛び出し、野球を楽しむことこそが最も評価されるのだ。
 
 しかし、決して野球のレベルが低いというわけではない。日本人選手も参加したトライコン・ルースとチーム・プエルトリコの試合は7回を終えて0-0。選手たちの希望により前例のない延長戦が行われたが、互いに無得点に終わった。誰が指図するでもなく、選手たちは自然にベンチから出て大声で応援する。試合後は両軍の選手がマウンドに集まり、皆で最高の試合を作り上げたことを祝って歓喜の輪を作った。
 
 ゲームセット後には選手たちがホームベース周辺に集まる。日本で見慣れた光景と言えば、整列、そして礼。だが、ここで行われるのはチームの垣根を越えたハイタッチの行列だ。時には審判も巻き込み、全選手が健闘を称えあう時間である。どのような試合結果であれ、「Good game!(良い試合だったね!)」と声を掛け合い、最後には全員で記念撮影をするのが恒例だ。
 
 連載第1回となった今回は、FIBIの概要と特徴を紹介した。次回以降は、大会に深くかかわった人物たちのインタビューを中心に、その魅力をさらに掘り下げていく。
 
取材・文 佐藤温