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日曜劇場『下剋上球児』原案 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル#5 軍手をはめた野球部員

2023/10/10

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菊地高弘



伊賀白鳳との連合チーム

 1年間をかけて環境整備に取り組んでいた選手たちだが、まったく試合をしなかったわけではない。部員が7名しかいないため、秋の大会は白山単独ではチームが組めなかった。そこで同じく部員が9名に満たない伊賀白鳳高校と連合チームを組み、公式戦に出場することになったのだ。
 
 連合チームの監督は東が務め、白山7名、伊賀白鳳8名の選手たちは定期的に集まり、白山のグラウンドで汗を流した。しかし、白山側からレギュラーになったのは隆真ひとりだけだった。「身内びいきにならないように」と東が配慮したわけではない。
 

 
「単純に青木以外は白山の選手より伊賀白鳳の選手のほうがうまかったんです。伊賀白鳳の生徒たちにもメッチャ怒りながら練習していましたね」
 
 三重県の高校野球は、秋と春の大会は7地区に区切って予選を行い、敗者復活戦も含めて地区予選の上位2~5校が県大会に進出する形式になっている。白山と伊賀白鳳の連合チームは8月17日から9月1日までの地区予選で4勝を挙げるなど健闘したものの、伊賀地区第3代表決定戦に敗れて県大会出場を逃した。
 
 翌春3月の地区予選では2戦2敗であえなく敗退。ここで新1年生が入学する新学期に突入するため、伊賀白鳳との連合チームは解消された。
 
 東は「伊賀白鳳の生徒たちへの思い入れもメッチャあるんですよ」と、約半年間の活動を共にした連合チームへの愛着を隠さない。
 
 そして2014年4月、東にとって白山2年目の新学期がやってきた。
 
 
第6回につづく)
 

書籍情報


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10年連続、県大会初戦敗退の弱小校 かつて県内で一番対戦したくない 〝荒れた高校”がまさかの甲子園!?
「一生覚えとけよ。こんだけの人が、お前らを応援してくれてんだぞ」
 
2018年夏の甲子園に初出場した三重県立白山高校。 白山高校は、いわゆる野球エリート校とは対照的なチーム。 10年連続県大会初戦敗退の弱小校。「リアル・ルーキーズ」のキャッチフレーズ……。
 
そんな白山高校がなぜ甲子園に出場できたのか。 そこには、いくつものミラクルと信じられない物語が存在した。
 
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【著者紹介】
菊地高弘
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、ライターとして独立。 『中学野球太郎』誌上では打者として有望中学生投手と真剣勝負する「菊地選手のホームランプロジェクト」を連載中。 著書に『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)、『野球部あるある』シリーズ(「菊地選手」名義/集英社)がある。 Twitterアカウント:@kikuchiplayer
 
 

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