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大阪桐蔭は“最強世代”か。「ネット社会の虚像」、タレント集団ならではの難しさとは

第90回記念選抜高校野球大会が23日、阪神甲子園球場で開幕する。記念大会のため出場校が36校に増加した今大会は白熱した展開が予想される。優勝候補筆頭とされるのは大阪桐蔭。「最強世代」と言われるが、指揮官はその評判をどう見るのか。

2018/03/22

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Hideaki Ujihara



タレント揃いだからこそ抱える悩み

 もっとも、今年のチームに物足りなさを感じるには理由がある。
 
 それは“タレント集団”が抱える悩みだ。
 
 投手陣を見ると分かるが、これまでの優勝チームは絶対的なエースとそれフォローする投手、強力打線という構図がしっかりとできていた。今年はエース候補がたくさんいるがゆえ、絶対的な存在を育成するところまでは至っていないのだ。トーナメント戦ではそれがもろ刃の剣となってしまうのである。
 
 西谷監督は言う。
 
 「例えば、投手陣に柿木しかいなければ、全試合、彼が投げる気持ちになりますから、責任感が生まれてきますよね。でも、実際は3人いる。すると『きょうの先発は誰やろな』みたいな空気になるんです。調子が悪かったら交代できる投手がいるという部分では、どの投手にも力強さが付きにくいと感じています。
 
 もちろん、選手の将来のことを考えれば、投手の登板過多を防ぐには枚数が多い方がいいですけど、その分、成長度合いが1枚のケースと同じようにいくかといえば、そういうわけではありません」
 
 昨季は徳山壮麿という絶対的なエースがいた。それを支えるのが根尾であり、柿木だった。だが、今大会は誰を軸にしてくのかをトーナメントを戦いながら模索していくことになる。投手の枚数は多いものの、単純に考えて去年より見劣りしてしまうというのは指揮官が感じるところなのだ。
 
 「去年の優勝を経験している選手が多いのは確かですけど、それがプラスになるかマイナスになるかは別の話ですから」
 
 西谷監督の采配をみていていつも感じるが、何が何でも勝利したいというタイプではない。
 
 甲子園の大会を通して、選手が何を得るかを見ているフシがあり、その成長のタイミングをしっかり見極めている。選手がそのタイミングを乗り越えたときに、優勝の公算があるとしている。
 
 育成と勝利の狭間で甲子園の経験を生かすどう生かしていくのかが念頭にある。その中で、「最強世代」の枕詞と付き合わなければいけないジレンマは、今大会の彼らにとって大きなハードルになることは間違いない。
 
 大阪桐蔭は大会4日目第2試合に登場する。初戦は21世紀枠で出場の伊万里(佐賀)だ。
 
 その試合を勝ち上がっても、同ブロックには強豪校がひしめいており、激戦が予想される。「最強世代」という評判の中、彼らはどんな戦いをするのだろうか。

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