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【2016年ドラフト交差点 隠し玉】大学NO.1野手・吉川の“宿敵”床田寛樹(中部学院大)にプロ注目。「全国の左投手の中で上位」とも

2016年度のドラフト会議が20日に迫っている。この1年を振り返ると、様々な選手たちがドラフト戦線に名乗りを上げてきた。しかし、有名選手だけが吉報を待っているわけではない。いわゆる、騒がれてはいないが実は候補として視線を集める“隠し玉”をリポートする。

2016/10/16

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尾関雄一朗



吉川より早くから全国舞台に立ち、岐阜学生リーグを牽引

 吉川はこの日の5打席を振り返り「少し大振りになってしまった」と反省しつつ、床田について「1年生の頃から打席に立ってきた中で、今日の床田が一番よかった」と宿敵を称えた。床田の長所について聞くと「140キロ台中盤のストレートがコースにくるので、踏み込んでも外角の球が遠く感じる。自分のような左バッターにとっては打ちにくい。スライダーやカットボール系の球もいい」と解説した。

 一方の床田は、吉川との対戦について「ピンチで吉川に回った場面も多く、抑えるのに全力だったので、あまり吉川のことは意識しませんでした」と心境を明かし、「今日のような(大振りの)バッティングをしてくれれば(投手としては)ありがたいですね」とクールに分析した。

 吉川とは東海地区大学野球連盟の選抜チームで会話をする程度の間柄で、『ライバル』などという言葉こそ本人らの口からは聞かれないが、「三振が少なくてミートされてしまう。足も速くてイヤなバッター。吉川を抑えれば大丈夫だという思いもあります」と、吉川への警戒度は他の誰よりも高い。

 試合は延長11回裏、中京学院大がサヨナラ勝ちした。床田は試合に敗れた格好だが、春の全国王者相手に延長11回途中まで2失点で投げ抜いたピッチャーを責めるのは酷だ。また、この試合の結果にかかわらず、試合前の時点で既に中部学院大のリーグ優勝は決まっている状況だった。床田はエースとしての役割を十分に果たしている。

 床田はもともと素質が高く、1年秋、2年秋の神宮大会で計3試合にリリーフ登板し好投した。原克隆監督は「マウンドで物怖じしない。どんなバッターにも向かっていける」と、堂々としたメンタル面も評価している。さらに、食事や走り込みの量を増やし、学年が上がるにつれて体重や球速もアップ。ストレートの球速は下級生時、130キロを超える程度だったが、持ち前のしなやかなフォームはそのままに、今では常時140キロ台に乗せた。この日は9回に148キロをマークし自己最速も更新している。

 プロ球団スカウトにとっても、床田は気になる存在である。

 熊崎誠也スカウト(日本ハム)は「変化球も含めてコントロールも悪くないし、左投手というのが評価ポイント」とし、球速アップについても「それは確実に出てきている」と成長を認めた。山崎賢一スカウト(ソフトバンク)は、時折痛打されて13安打を浴びたこの日の投球内容に対し「甘い球があったり単調だったりして、『それだけの(良い)球があるのにもったいない』という場面もあった」としながらも、「しなやかな腕の振りからキレのいいストレートを投げる。投げ方は全国の左投手の中で上位。体に強さ、上積みが出てきたら楽しみ。そういう像を描きながら見ている」と期待を込めた。

 今年は中京学院大が脚光を浴びているが、ここ数年の岐阜学生リーグは中部学院大が盟主的存在でリーグを引っ張ってきた。事実、2年前の秋には神宮大会でベスト8入りし、ドラフト1位野間峻祥(広島)も輩出した。

 その頃から、当時のエース・齋藤弘志(現・日本新薬)に次ぐ2戦目の先発投手としてキラリと光り、岐阜学生リーグのハイレベル化に寄与してきたのが床田だ。今秋、1戦目の先発としてリーグ覇者の座は奪還した。そしてドラフトでも、さすがに吉川の指名順位を上回ることはなさそうだが、名前を呼ばれるだけの資質と資格は十分にある。岐阜学生リーグの象徴的対決「床田対吉川」をこの先、プロの世界でも見てみたい。

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