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佐賀北に大逆転負け。敗者となった広陵野村(広島)・小林(巨人)が選択した1球の背景【夏の甲子園決勝の記憶】

2007年夏の決勝、広陵対佐賀北は球史に残る一戦となった。敗北を喫した広陵は、野村と小林のバッテリー。今はカープとジャイアンツでプレーする2人は、あの日あの時何を感じたのか。

2016/08/21

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「頼むから入らんといてくれ」

 今にして思えば、あれは「人生を生き抜いていくためのヒント」だったのかもしれない。
 2007年夏の決勝、広陵対佐賀北の間で行われた一戦は、球史に残る大奇跡が起きた。

 0-4で迎えた8回裏、佐賀北は1死から4イニングぶりとなる安打を放つとそこから連打と四球で1点を返すと、3番・副島浩史がレフトスタンドに逆転の満塁本塁打を放ったのである。

 誰もが広陵の完勝を予感した試合だった。だが、たった1イニングだけの攻勢で試合の流れは大きく変わったのだった。そのまま、佐賀北が初優勝を果たした。
 
 8回の攻撃中、スタンドが佐賀北の応援一色になり、様々な風が吹いたのもまた事実だ。微妙な審判のストライクゾーンをはじめ、広陵にとっては逆風ともいえる雰囲気に包まれていた。いくら勝負の世界とはいえ、弱冠17歳の高校生には残酷なシーンとさえいえるものだった。

 そんな奇跡の大逆転を敗者として、誰よりも悔いている人物がいる。

 巨人の正捕手を務める小林誠司である。
 当時、エースの野村祐輔(現広島)を引っ張っていた女房役だ。

「頼むから入らんといてくれ、その想いだけでした」

 ホームランの場面。
 野村のスライダーが甘い球なのは分かっていたし、打者がしっかりと捉えたのも分かっていた。ただ、最悪な状況だけは避けてくれ、打球を見送りながら小林はただただ祈った。

 しかし、無情にもスタンドイン。

「外野が追うのをやめたので、やってしまったなと。夢から現実に突き落とされる感じ。最悪なことが起きてしまった。野村に悪いことをしてしまった。それだけです」

 小林が悔いているのは、ホームランを打たれたボールが甘かったからではない。
 ジャッジが厳しくなってしまったのも、そして、佐賀北が攻勢を懸け球場全体が佐賀北一色に染まってしまったのも、自分の一つのリードが引き金になっていると感じているからだ。

「なんで、僕はあの時、あの球を要求してしまったんやろって、本当に野村には悪いことをした」

 小林がそう振り返るのは、8回1死走者なしで迎えた、8番・久保に投じたボールだ。
 初球、野村はスローボールを投じ、痛打されている。

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shiro