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夏の高校野球熊本大会、被災した藤崎台球場開催決定の意義。プロ・アマ野球界結束で「復興の第一歩」に

6月21日、熊本県が熊本城の曲郭内にある藤崎台球場の7月10日からの使用再開を決めた。この決定は、単に一つの球場の使用が可能になったということではない。高校球児にとって聖地ともいわれる藤崎台球場が復興に向けての足掛かりとなる。

2016/06/23

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藤崎台開催の意義、松坂・攝津らも支援

 しかし、藤崎台球場は決して万全ではない。大会中も並行して破損箇所の修復工事は行われるという。とくに損傷の激しい左翼席への立ち入りは禁止となり、駐車場も近隣の熊本城二の丸が閉鎖されるために台数が限られ、大会中は混乱をきたす可能性も充分に考えられる。
 
 それでも藤崎台使用の報は、熊本の人々を勇気づける英断として受け止められている。
 
 再び九州学院の坂井監督が口を開いた。
 
「我々熊本の人間にとっては、熊本城はシンボル以上の存在なんです。我が家であり、家族と同じ。地震で痛めつけられた熊本城は、県民ひとりひとりの痛みを表していると言っても過言ではありません」
 
「そして、同じ敷地にある藤崎台球場=熊本城なんです。だから熊本の人はこの球場をすごく大事に思っている。その藤崎台で例年と同じように若い力が“熊本代表”を賭けてぶつかり合うのですから、これは間違いなく熊本城復興の第一歩、つまり熊本全体が復興するための第一歩になります。今年の藤崎台開催には、それぐらい大きな意味があるのです」
 
 今年度いっぱい継続されるという球場の復旧費用は、3億6千万円が見込まれている。後ろ向きになってしまいそうな状況の中で、熊本の高校野球は藤崎台で復活する。また、毎年4月の九州新幹線シリーズで藤崎台を使用しているソフトバンクの松坂大輔が1000万円、攝津正が300万円を復旧支援のために寄付すると発表した。
 
 ここへ来て、プロ・アマ野球界が被災地復興のために手を取り合い、大きく第一歩を踏み出したのである。
 
 王が本塁打を放ち、天才・前田をはじめ多くのプロ野球選手を送り出してきた藤崎台県営野球場。熊本工や濟々黌、九州学院をはじめ、県内の高校球児が魂を削り合ってきたこの球場が迎える特別な夏。伝統と格式のある熊本の聖地が、復興・再興の発信源となることを強く、強く願う。

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