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故郷へ戻り、楽天日本一の原動力に 先発と抑え、日米で記録と記憶を残した斎藤隆

楽天の斎藤隆が17日、今季限りでユニフォームを脱ぐことを発表した。横浜から始まった日本でのプロ野球生活、その後アメリカへ舞台を移して活躍。最後は故郷で楽天初の日本一に貢献した。

2015/08/18

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ベテランの真骨頂を見せた2013年の天王山

 中でも感慨深い試合がある。
 
 8月23日ロッテ戦だ。当時、首位を走る楽天は危機に立たされていた。前日日本ハムに0-5と完敗し、このシーズン初の5連敗。一方の2位・ロッテは打線が爆発し、18得点の大勝で西武を破り、楽天とのゲーム差を2.5に縮めていた。
 
 勢いに乗ったマリーンズを本拠地で迎え討つ決戦関ヶ原の3連戦。その初戦、田中vs西野の投手戦になる。初回からピンチを背負った田中が根気良く投げて7回無失点に抑えると、粘投の田中を援護すべく中盤以降、打線が西野の攻略に成功。5点リードの8回、斎藤が二番手で登板し1イニングをゼロに抑えた。
 
 5点差とはいえ、本戦の意味を熟知したベテランは全く隙のないピッチングをみせた。4番・今江、5番・角中、6番・代打のブラゼル、マリンガン打線の中軸を撫で斬りにする三者凡退投球で応戦する。今江、角中をゴロアウトに、ブラゼルは3球勝負の空振り三振。いずれも結果球はストレートだった。特にブラゼルには真っすぐ3連投で圧倒し、空を切らせること2度の奪三振。連敗ストップに貢献している。
 
 翌24日の試合ではスクランブル登板になった。
 
 9回、抑えのラズナーが右肘違和感で突如の負傷降板。急遽マウンドに向かう難しい状況ながらも、1死1塁で3番・井口からの相手打線の反撃を断っている。このカード、楽天はベテラン右腕の好投もあり3連勝を飾った。2戦目、3戦目は4点差をひっくり返しての逆転勝利で、2位・ロッテとの差を一気に5.5とした。以降、イーグルスは大きな連敗もなく、首位をひた走る。僅差を制した2-1で勝利の8月28日オリックス戦では、斎藤の好投で球団初のマジック28が点灯した。1点リードの9回に抑えで登板。しっかり3人で締めた。終盤の要所では、この人の好投があった。同点または1点リードで登板した11試合では防御率1.63の好成績だった。
 

唯一、日米両方で300登板を達成

 改めてその成績を振り返ってみよう。
 
NPB=402試合、防御率3.76、91勝81敗、55セーブ
MLB=338試合、防御率2.34、21勝15敗、84セーブ
 
 MLBで記録した84セーブは、佐々木主浩の129セーブ、上原浩治の86セーブに次ぐ日本人投手3位。日米両方で50セーブ以上を挙げた投手は、斎藤と同郷の佐々木主浩(NPB252セーブ)の2人だけだ。日米両方で300登板以上に投げた日本人投手は斎藤隆ただ1人。キャリアの最初9年間を主に先発でプレーし、30歳を過ぎてからの約15年間をリリーフで活躍。先発よりもリリーフでの稼働期間が大きく上まわる、珍しい球歴を残した。メジャーで5年連続40登板も斎藤1人だけである。
 
 楽天でのプレーは僅か3年間という歳月だったが、それでも東北のファンにとっては濃密な3年間。ユニフォームを脱いでも野球界の内外で活躍してくれることは間違いないにしても、ひとまず24年間の現役生活にお疲れ様でしたと感謝したい。

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