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「ファンを恐れない」球団黒字化への道【前日本ハム球団社長・藤井純一氏#4】

現在、日本のプロ野球界で実に効率的なチーム作りをしているのが北海道日本ハムファイターズである。東京から北海道へ移り、地域密着に成功した球団の土台を築いた一人が藤井純一前球団社長だ。これまでの藤井氏の話を聞くと、「負けない」ファイターズ、「集客力のある」ファイターズの土壌が見えてくる。

2015/08/21

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選手の評価は担当者に一任

 藤井はファンサービスに力は入れるが、ファンを恐れない――。
 
「例えば、ある選手はファンから人気がある。その選手をクビにしたらファンが怒るんじゃないかと、実際には戦力外として考えているのに契約するということが球界にはある。でもぼくにはそれは考えられへん。11月に契約更改でクビにしても、2カ月間、貝になっておればいい。吉村さんに〝気にせんでクビ切ってええよ〟って言っていた。新しいシーズンになってキャンプが始まったら、クビにしたことなんかみんな忘れていますから」
 
 選手の見極めは、吉村浩に一任されていた。フロントは現場と一線を引き、選手の評価は担当者に任せる。この方式もまたバイエルン・ミュンヘンで学んだものだった。
 
 64年生まれの吉村は、スポーツ新聞の記者、パシフィックリーグ事務局勤務を経て、2000年からデトロイト・タイガースの球団管理本部で働いた。2003年に阪神タイガースに移り、2004年、藤井と同じ年にファイターズへ入っていた。
 
 吉村はファイターズで、ベースボール・オペレーション・システム(BOS)という情報システムを導入している。BOSは選手の年俸の他、運動能力、故障や体調などのデータが入っている。
 BOSではじきだした選手の価値に見合わない年俸は支払わない。ファイターズはこの基準を徹底している。

 野球の世界はサッカーと比べると、査定が甘く、契約に〝格〟が持ち込まれることがある。
 例えば、今シーズン、ソフトバンクホークスは、メジャーから戻った松坂大輔と年間4億円で契約を結んだ。彼の年齢、近年の実績を考えれば、人気を考慮しても5000万円程度だろうか??
 
「以前にファイターズで中村ノリ(紀洋)を獲るという話が出たときぼくは、商品価値に対して高額な選手を獲るのだったら、社員を増やしたほうがいいと主張した。年俸1億円の選手を獲っても、収入が1億円増えるわけではない。それならば営業の社員を入れたほうが、ずっと球団経営のためになる」

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