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「年金制度を白紙に」日本の選手会ならではの決断と普及活動【事務局長・松原徹氏に聞く、日本プロ野球選手会の実態8】

2004年の球界再編問題の時に、日本のプロ野球選手会の存在を知った野球ファンの方は多くいるのではないだろうか。今回、ノンフィクションライターの田崎健太氏がプロ野球選手会事務局長の松原徹氏へ選手会、そして野球界の抱える様々な問題について取材を行った。6回目はストライキやFAに対して、選手会はどのようにとらえているのかを聞いた。

2015/07/22

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苦渋の決断

 前回、この連載では日本のプロ野球機構(NPB)の年金と、そしてメジャーリーグの年金を比較するのは意味がないと書いた。そしてそこには無知と誤解が存在するとも。

 これは一般的な日本の年金制度が非常にわかりにくいことにも起因している。さらに言えば、年金運用に不都合な事実があるため、煙に巻いているという面もある。

 2004年、小泉内閣が適格年金廃止の方針を打ち出した。このとき適格年金を利用したNPBの年金制度は破綻していた。

 年金は、選手たちから一定の積立金を集め、年5.5%の運用益を出すと約束していた。ところがこの不安定な株式市場の影響でその運用益は実現できず、すでに約52億円が不足していたのだ(もちろん、こうした事態はNPBの年金だけではない)。
 さらに、これまでの年金の支払いを続けるには、年間9億円程度の資金だった。日本経済の縮小とともに、かつてのように金が流れ込むことがなくなったこともあり、NPBはこの負担に耐えきれなくなっていた。

 政府の方針――適格年金の廃止を理由に、この年金制度を解散することは、NPBにとっても都合が良かったといえる。
 プロ野球選手会の松原徹事務局長はこう振り返る。

「年金制度が立ちゆかなくなることは、以前から予想していました。NPBに今の形を維持するように強く要求するのも一つのやり方でしょう。ただ、向こうの財政が厳しいこともわかっていました。NPBがあっての野球選手、そして選手会でもある。無理な要求を突きつけることは現実的ではない」

 当時の選手会長は阪神タイガースの新井貴浩が出した結論は、これまでの年金制度を一度白紙に戻すということだった。
 松原はこれは苦渋の決断だったと評する。

「今のままでずっとOBに支払っていると、いつまでたっても今の現役が引退した頃にはお金は回ってこない。大変申し訳ないんですけれど、一度、どこかで今の制度を解消しなければならなかったんです」

 NPBは13億円を解散資金として準備した。これまでの積み立て資金に加えて、この13億円を加えたものを返却する形になった。

「新井さんの方針は、なるべくOBに手厚く、現役には薄く、というものでした」

 現役選手についてはNPBが以降、年間3億円程度を「国民年金基金」に積み立てることにした。サムライジャパンなどで得た収益も積立金に加えることになっている。

 会社員は国民年金に加えて、厚生年金等が上積みされている。国民年金基金は組織に属していない自営業者のため、免税で上乗せするために作られた制度だった。

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