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「隠れ新人王候補」杉浦稔大はヤクルト投手陣の救世主になるか?

2年連続最下位からの巻き返しを目指し、このオフは積極的な補強に打って出た東京ヤクルトスワローズ。特に昨年は壊滅状態だった投手陣は、FAの成瀬善久を獲得したことで石川雅規、小川泰弘との先発3本柱が確立した。だが、上位進出を狙うには彼らに続く投手、いわば『救世主』となる存在が必要だ。その可能性を秘めているのがプロ2年目の右腕、杉浦稔大である。

2015/01/28

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背番号18はダテではないことを初登板で証明

 昨年9月10日、横浜スタジアムのDeNA戦。シーズン123試合目にして、杉浦は初めて一軍のマウンドを踏んだ。即戦力と期待されてドラフト1位で入団した大卒ルーキーであり、本来ならばもっと早い時期に戦力になっていなければいけなかった。
 
 ところが2月のキャンプ終盤に、右ヒジ内側側副靭帯を断裂。手術を回避し、保存療法によるリハビリで復帰を目指したものの、ファームでの実戦登板までは5カ月近い期間を要した。
 
 そこからさらに1カ月半の時を経て、ようやく上がった一軍のマウンド。だが、そんな感慨もあっという間に吹き飛んだ。プレーボールからわずか数分で、DeNAの先頭打者・梶谷隆幸に内角低めのストレートをライトスタンドに運ばれてしまったのだ。いきなり浴びたプロの洗礼──。そのまま自分を見失っても、おかしくなかった。
 
「先頭打者(本塁打)はあったんですけど、その後はけっこう落ち着いて投げられた感がありました。あそこでガタガタいきたくなかったので、そこから自分のピッチングをしようというのを心がけて、しっかり投げることができました」
 
 試合後に自らのピッチングをそう振り返った杉浦だが、実際この一発に動じることなく、続く山崎憲晴を落ちる球で空振り三振に仕留めると、三番・グリエルはストレートでライトフライ。さらに四番の筒香嘉智は、0-2から真ん中高めの144キロのストレートで空振り三振に斬って取った。
 
 その後も6回まで毎回の9奪三振。味方の援護なく2失点で敗戦投手になったものの、背番号18を与えられたのはダテではないことを、自らのピッチングで証明してみせた。
 
 強烈だったのは、投球数の半数以上を占めたストレートだ。スピードガン表示はおおむね140キロ台中盤ながら、DeNAのバッターが手こずらされたのは数字以上の威力があった証だ。
 
 梶谷に許した初回先頭弾も、打ち取ったかに見えた打球が風に乗ってスタンドまで届いたものであり、これを除けばストレートを外野まで飛ばされたのは、初回のグリエルの右飛と6回の山崎の左越え二塁打しかない。四番の筒香に対しては、バットの上をいく伸びのある直球で2打席連続空振り三振に仕留めるなど、9つの三振のうち5つをストレートで奪った。
 
「真っすぐはしっかり差し込めていたというか、バッターもちょっと振り遅れている感じがあった」という杉浦の言葉からも、ストレートに対する手ごたえがうかがえた。スライダー、そして自身は「スプリットと呼んでいる」という落ちる球のキレの良さも光った。しかも与えた四死球はゼロ。対戦したのべ21人の打者でカウントが3ボールになったのは4人だけと、制球力も際だっていた。

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