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気になる野球選手のオフの過ごし方 ピッチング開始まで焦らず、緩やかに【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】

読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載。小島氏は現在、(株)K’sLabを立ち上げ、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。今回のテーマは「オフシーズン」です。

2015/01/26

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プロ1年目のキャンプはピッチングを遅めに

 一方、これからプロに入る選手は、2月1日が一斉のスタートになりますが、彼ら新人選手にとっては、第2クールが終わってからキャッチボールから始めるくらいがいいのではないかと考えます。逆に言うと、キャンプインから2、3週間はピッチングはしないほうがいいです。

 というのも、彼らは新人で、まだプロの水に慣れていません。先輩の名前やタイムスケジュールもわからない状況で過ごしています。プロに入って、気持ちも高ぶってきますから、常に緊張状態で、過剰に力が入ってしまっているということを考慮に入れなければなりません。

 その状況を乗り越えた選手が新人王を獲得しているという事実はあります。しかし、そのような選手たちが2年目以降も伸び続けているかというと、過去を見れば、必ずしもそうとはいえないのではないのでしょうか。入団してメディアや周囲から「即戦力」と煽られて急激な坂を昇り、結果として、パフォーマンスを維持できていないのです。

 高卒でも、大卒でも、社会人からの入団であっても、緩やかに階段を昇っていくべきではないでしょうか。一番調整の仕方がわからない、自分をコントロールできない若い選手たちです。彼らほど、たとえばピッチャーは50球以上のピッチング練習をしてはいけないというような球数の管理をしなくちゃいけないのです。ドラフト上位の選手であれば、数億円を使って獲得しているわけですから、大切に育成していかなければいけないでしょう。

ジュニア年代は体のメンテナンスと、他競技も体験してみよう

 ジュニア世代の選手の場合になりますと、彼らにとっては、オフシーズンの時期こそ、極めて重要と言えます。

 どうしても、目に見える部分に重きを置きがちですが、ジュニア世代の選手は、見える部分よりも、見えない部分を意識することで大きく違ってくるからです。地面にしっかりとした根を張ることが肝要です。

 その根を張るというのは、「人として」どうあるべきかという人間の姿勢であると思います。一番多感な時期でスポンジのように何事も吸収することができる。どのような失敗も許されるこの時期にこそ、何を学ぶか。それが人間教育というものでしょう。

 10月中にシーズンが終わるのが理想と考えますが、そこから3、4カ月の期間は、しっかりとリフレッシュをして、体のメンテナンスを行う。そして、他の競技をトレーニングの一環として、積極的に取り組み、勉強をしっかりすることです。勉強をすることの意義は、頭脳を使えないことには、何事にも発想力につながっていかないからです。

 いい習慣をどれだけつけるか。

 たとえば、自分で起床することは最低限、自分の意思で本を読むこと、落ちているゴミを拾うこと、困っている人がいたら手を差し伸べられること、感謝の気持ちを伝えられるなど、良い習慣を身につけられるか非常に重要なのです。

 これらを意識することで、一見は直接関係のないことのように思えても、想像以上に野球のパフォーマンスが上がってくるのです

 オフシーズンというのは、非常に重要です。
 どれだけ有効な時間を過ごし、工夫、習慣づけできるか。
 それが少年から青年以降の土台・基盤になると思っています。

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小島圭市 (2)

元ロサンゼルスドジャース 日本担当スカウト
小島圭市(こじま・けいいち)

1968年7月1日、神奈川県生まれ。東海大高輪台を卒業後の86年、ドラフト外で巨人に入団。 92年にプロ初勝利を挙げるなど、3勝をマークした。その後は故障に泣かされ、94年のオフに 巨人から戦力外通告。巨人在籍中の怪我の影響で1年浪人のあと、96年テキサスレンジャーズとマイナー契約。1年間、マイナーリーグで活躍した。翌年に日本球界に復帰し中日ドラゴンズでプレー。その後は、台湾の興農ブルズなどで活躍し、現役を引退した。01年日本担当スカウトに就任。石井一久、黒田博樹(ヤンキース)、斎藤隆(楽天)の獲得に尽力。三人が活躍したことから、スカウトとしての腕前を評価された。2013年にスカウトを退職。現在はジュニア育成のため、全国の小・中学生の指導者へ向けた講演会活動や少年野球教室を展開。2014年には会社「K’sLab」を設立。その活動を深く追求している。

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