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「残されたピース」を埋める存在 人的補償で19歳の奥村を指名した、ヤクルトの思惑

奥村展征。19歳、内野手──。このオフ、FAで巨人に移籍した相川亮二の人的補償として、東京ヤクルトスワローズが〝指名〟した選手の名は、実に意外なものであった。昨年は2年連続の最下位に沈んだヤクルトは、投手陣の建て直しが急務だったはず。そこを投手ではなく、あえて実績のない若い内野手を人的補償に選んだ背景には、どのような思惑があったのだろうか。

2015/01/12

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奥村は「残されたピース」を埋める存在

 ならば後はプロテクトから漏れた選手の顔ぶれを吟味して、「ポジションがどうこうじゃなく」埋めるべきピースを埋めていけばいい。それでは「埋めるべきピース」とは何か? 投手以外では、まずはこれまでなかなかレギュラーを固定できなかったショート。これは日本ハムからFAになった大引啓次の獲得で既に埋まっている。
 
 では相川の移籍により、経験のある控えは田中雅彦ぐらいになってしまったキャッチャーは? これも巨人を戦力外になった井野卓を昨年暮れに獲得したことで、一応の補強ができた。すると残されたピースは何か?
 
 実はヤクルトには、ここ数年来抱えてきた秘かな課題があった。昨年は大卒ルーキーの西浦直亨が開幕スタメンに抜てきされ、22歳の山田哲人が日本人右打者としては歴代最多の193安打を放つなど大ブレイク。さらに終盤には大卒2年目の谷内亮太が台頭してきたことで、ともすれば若くて活きのいい内野手が豊富という印象を持たれがちだが、2015年の満年齢で25歳以下の内野手は、その3人しかいない。
 
 ここ数年のヤクルトは、ドラフトで投手を含め、即戦力になりそうな選手の指名を優先してきた。その結果、高卒新人内野手の入団は2011年の山田まで遡らなければならず、現状では「U-21」の内野手が皆無という状態に陥っていたのだ。
 
 つまり将来を見据えた場合に不安の残る「20歳前後の内野手」の不在を、昨年は高卒ルーキーながら二軍で正二塁手として起用されるなど、巨人でも期待の大きかった奥村を獲得することで埋めたことになる。もっともそれはここまで、最優先課題だった投手陣の補強をある程度済ませていたからこそ、実現できたことだ。
 
 さらに言えば、FAで獲得した成瀬、大引の人的補償として、彼らの旧所属球団であるロッテ、日本ハムに選手を獲られなかったのも大きい。もし、どちらかのチームに人的補償として投手を要求されていたら──。
 
「もちろん、そうなったらまた話は違ってたかもしれないですね」
 小川SDはそう話す。
 
 その点も含め、2年連続最下位からの巻き返しを期すヤクルトの戦力補強は、ここまでほぼ思いどおりになっていると言っていい。

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