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「プロ1年目の選手に否定系の言葉はNG」。言葉を重視する、落合博満流コミュニケーション術【横尾弘一の野球のミカタ】

自身の現役時代の経験から、落合GMは選手に接する際に大事なことを心がけている。

2017/01/10

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長年芽の出ない選手には指導者主導も

「例えば、入団直後の私に対しても、『あの打ち方では使えない』ではなく、『なかなか個性的な打ち方だけれど、こういう打ち方も試してみるといい』と伝えればよかった。実際、私の打ち方は使えなくて、先輩のフォームを参考にして新たに作り上げていったんだから。私たちの時代は、指導者の何気ない、けれど選手にとってはプライドを傷つけられるような言葉によって、多くの若手が消えていったと思う。指導する立場になったら、それを繰り返しちゃいけないだろう」
 
 そうして1年を過ごしたあと、思い描く結果を出せなかった選手については、指導者もその原因を分析しておく。もちろん、選手自身も打開策を考えているだろうから、それを尊重しながら正しい練習法を教えなければならない。加えて、自信を持たせるのも大切だから、常にコミュニケーションを取り、「自分は指導者から見放されていないんだ」と感じさせることも必要だという。
 
 そして、指導者の力量が最も求められるのは、数年経ってもなかなか芽の出ない選手だ。こうした立場の選手に対してだけは、指導者の主導型で完璧に洗脳してやるしかない。色々な形で努力してきて、それでも好結果が出ないのだから、「俺を信じてついて来い」と伝えて闘志を掻き立てるしかないのだという。
 
「技術の世界と言っても、やるのも教えるのも人間でしょう。同じ目標を目指すなら、できる限り人間関係も良好なほうがいい。空腹や寝起きの人に矢継ぎ早に言葉をかけたら、気分を害してしまうように、言葉をかけるタイミングは大切。どんな言葉をいつかけてやればいいのかは、指導者にとって永遠のテーマだろう」
 
 そう語る落合の視線は、とても温かい。

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