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【里崎智也×ザック生馬特別対談】侍JAPANへの提言#1 小久保野球の発信を!「監督のやりたい野球が見えてこない」

 2017年は第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催される。  侍JAPANは2013年の小久保裕紀監督の就任以降、「世界一奪還」を目標に掲げ、かつてないほどの強化試合を繰り返してきた。しかし、2015年のプレミア12では3位。昨年終盤の強化試合では3勝1敗と勝ち越したものの、脆さを露呈した。本当にこのままで侍JAPANは、世界一奪還を果たすことができるのだろうか。  今回は新春企画として、鋭い視点を持つ2人の識者による対談を実現。第4回WBCを最高の形で締めくくるために、何が必要なのか。深く切り込んでもらった。  第1回WBC優勝メンバーのひとり里崎智也氏と独自の奥深い観察眼から取材を続けるザック生馬氏。スポーツライター・氏原英明が司会を務め、二人に熱く語ってもらう4回連載だ。

2017/01/02

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小久保監督自ら、具体的な目指す野球を発信すべき

ザック生馬(以降ザック) 里崎さんは分かるんですけど、僕でいいんですか?
 
里崎智也(以降里崎) いいですよ! 同じプロ野球解説者だったら、同じ視点でしゃべれないからむしろ困ってしまいます。しかも僕はWBCでも結果を残しちゃっているんで、僕の意見を覆せないじゃないですか(笑)。ザックさんは僕が見えていない視点から話していただけると思います。
 
――ザックさんは日本のチームはもちろん、海外のチームも取材してくださっているので、そこの引き出しも出していただければ。では、まず、メンバーが19人、先行発表されています。その印象からお願いします。

里崎 固定だないう印象しかないですよね。サプライズはないなって。ずっとやっている良さを重視したのもあると思いますけど、おなじみな印象しかないです。
 
ザック ここでサプライズを求めて、何かにワクワクしたいかは分からないけど、せめて一人くらい驚く選出があっても良かったですね。
 
里崎 付け加えると、小久保監督がどういう野球がしたいのかが分からない。
 
ザック そうですか?
 
里崎 サッカーでいうと、サイドアタックを中心に攻めたいのか、カウンターなのか、攻撃的に行くのかという、監督のやりたいビジョンに応じて、選手選考が決まるべきなのに、そもそも小久保監督がどういう野球をやりたいのかが見えてこない。
 
ザック これまでは短期決戦と親善試合、強化試合しかなかったじゃないですか。そのくらいの数試合で分かるものなのですか?
 
里崎 本人が言っていない。例えば、僕が参加した第1回の時は王貞治監督が「スモールベースボールでやる」と。一つの認識として、力で対抗できないから、バンドやエンドラン、小技を絡めて勝っていくというメッセージが伝わってきました。
 
ザック なるほど。
 
里崎 でも、今回は何の発信もないから、小久保野球とはなんぞや?を語れる人がいるのかなと思う。だから選手選考にしても、こういう野球をやりたいから、この選手が選ばれたんだなという基準が分からない。角中勝也ではなく秋山翔吾が入る違いが分からない。
 
――ヒットに限れば、角中でもいい。秋山は盗塁が得意ではない。

ザック そうですよね。中村晃選手や角中選手でもおかしくない。多少、守備のことはあったんでしょうけど。
 
里崎 あいつもこいつも使いたいから選ぶみたいな感じで、チームの核がない。
 
ザック 発表メンバーをみると、内川聖一選手とか松田宣浩選手が、チームリーダーになるんでしょうか。内川選手は大事な場面で右打ちができるのはいいですが、数字の世界で話をすると、打率以外の部分でもっと他にいい選手がいますよね。一方、松田選手は他代表チームから『彼からは野球へのパッションが伝わってくる』と注目されています。
 
里崎 一つ難しいのは試合に出て結果が出ないと、リーダーになりきれないということ。どれだけパッションが熱くても、打てない、活躍できない、調子が悪いとなった時に、同じようにリーダーと認められるかというと難しい。
 
――実際、昨季のソフトバンクが失速した時に、松田選手に元気を感じませんでした。

里崎 調子がいい時だけリーダーになれるだけではダメなんです。調子が悪くても、チームがその人の方を向いてできるかがリーダーの資質だと思う。
 
ザック 2009年はイチロー選手が苦しみながらも、最後に必要な期待に応えられたし、それまでの間、周りの選手がずっと盛り上げていました。
 
里崎 周りの選手たちがハイソックスにしたり、イチローさんが打てなくても、みなリーダーのほうを向いていた。松田がリーダーになって、試合で調子が出ないとなった時に、全員が松田のほうを向くかどうか。そこで向かなかったら、ただのお調子者になる。2009年のイチローさんみたいに、打てなくても、全員がリーダーを心配して何とかしよう、盛り上げていく人が真のリーダーだと思います。
 
ザック イチロー選手にはカリスマがあるから、みんながどんなことがあっても、その背中についていきたいと思えたわけですね。
 
里崎 右向け右が、向くかどうかですよ。
 
ザック でも、このチームだとその二人くらいしか思いつかないです。
 
里崎 リーダーってそもそも誰かが決めることじゃない。自然になるので、いなかったらいないで仕方ない。真のリーダーは監督ですから。
 
ザック だから、小久保監督がどういう野球をするかが重要なんですね。

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