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FA糸井の獲得を目指す阪神。“ビジョンなき補強”で思い起こされる過去の失敗

フリーエージェント(FA)宣言選手の告示が締め切られた。今年の注目選手は阪神が獲得を目指すといわれている、オリックスの糸井嘉男だ。

2016/11/10

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城島獲得後、正捕手が育たず

 阪神の補強で思い起こされるのは、2010年、MLBで活躍していた城島健司と2011年にFAでロッテから小林宏を獲得したときのことだ。

 2010年ころの阪神は、引退が迫っていた矢野燿大の後釜探しに奔走していた。
 2003年、2005年の優勝に貢献した矢野が引退してから選手を育成するのでは遅く、それ以前に矢野のポストを埋める必要がある。そういう背景もあり、ドラフトではそれ以前から立て続けに捕手を指名し続けていた。それが狩野恵輔、岡崎太一、小宮山慎二たちだった。

 そのなかで、2009年に狩野が台頭した。
 狩野は2009年シーズン、115試合にスタメン出場、打率.262、5本塁打、35打点の成績を残していた。2007年にマークしたプロ初安打が巨人戦のサヨナラ打だったという好印象もあり、虎党の心をつかんだ狩野への期待は大きかった。

 ところが、阪神の球団首脳は2009年のオフに、城島の獲得に踏み切ったのである。

 当時の阪神には鳥谷敬、平野恵一、金本知憲、ブラゼルら左打者が多く、偏重打線ではあった。だから、右の強打者である城島の獲得はその補強ポイントに合致したが、ファームからたたき上げて伸びてきた選手の芽をはぎ取るという点においては失うことも多かったのだ。

 城島の獲得がどれだけの作用をもたらしたか。
 今になっても、正捕手が定まっていない現状、今季、金本監督が就任するまで若手が伸びる土壌がないのは、こうした補強がもたらした影響も、決して少なくなかったはずだ。

 筆者は当時、Number webに「城島健司がもたらす二つの作用」と疑義を呈した記事を寄稿したが、チームづくりへのビジョンは、編成が補強に走る時には気になるところなのである。

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