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日本中の野球ファンが目撃したNPB史上初の9回。百年語り継がれるべき、リミッターを外した大谷翔平の15球【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#40】

今季の王者・北海道日本ハムファイターズが、パリーグクライマックスシリーズファイナルステージを制し、日本シリーズへ進出する。

2016/10/18

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札幌ドームを包んだ不思議な共時性

 僕はそのとき、札幌ドームを包んだ不思議な共時性の感覚について書き記しておきたい。ユングによれば人の無意識領域は海底のようにつながっている。だから、何かに気づくとき、皆いっぺんに気づいたりする。何かを考えるとき、皆同じことを考えたりする。
 
 その考えはふわっと球場をおおった。いや、もしかするとテレビ中継を通じて日本中をおおった。当の大谷翔平は「指名打者として出場していたので身体も動いていた。(クローザー登板が)あるとは思ってた」。栗山監督は「(試合中)あいつがこっちをじっと見ていた。本人の気持ちを止めてしまうことがいちばんのリスク」。こうね、個々の意識は海面上に出て陸地を形成しているのだけど、海底(集合無意識)は全員つながっている。同じ天啓がひらめいた。それだ、それしかない。
 
 確証もないのに球場がざわつきだす。ベンチから大谷が消えている。NHK-BSはベンチ脇のプルペンモニターを抜こうとする。長身の選手が投球練習を行っている。HBCラジオは8回裏終了時のCMを取りやめた。敵も味方も観客も報道もなく、全員がゾクゾクしていた。これからプロ野球史上初めてのことが起きる。
 
 DH解除で大谷が登板する。球場が震える。F×H最終決戦のクライマックスだ。そこで僕らはリミッターをかけない大谷の15球を見る。自身の日本最速記録を塗り替える165キロを三度マーク(直球8球の平均球速164.1キロ!)、フォークボール151キロ、スライダー145キロ。もう日本シリーズ出場がどうとか、そんな騒ぎじゃなかった。
 
 1球ごとに歓声とも叫び声ともつかないものがこだまし、興奮が最高潮に達する。9回表を三者凡退に切って取ったのだから、ファイターズの勝利だ。大歓声だ。だけど、何か勝った以上にすごいものを見てしまったと皆が思っている。
 
 ソフトバンクよ、最強の友よ。ありがとう。高い目標があったからチームが成長できた。最後は百年語り継がれるシーンを目撃できた。
 
 そして広島カープよ、日本シリーズで逢うのが楽しみだ。最高の戦いをしよう。僕らはこのストーリーにつづきがあるのを皆、同時に感じている。シリーズ出場が決まり、丸1日以上たってもゾクゾクしたままおさまらないんだ。
 
ファイターズ日本一へ導いた、4番の一打。主役・中田の劇中で舞台装置の働きをした大谷【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#41】
 

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