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二刀流、160キロ超え……4年という月日を積み上げて、球界の常識を覆した大谷翔平

12日よりクライマックスシリーズファイナルステージが始まる。混パを制した北海道日本ハムファイターズは、やはり大谷翔平がカギを握る。

2016/10/11

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高校時代にスライダーの多投を避けた理由

 高校時代の大谷は、スライダーを多投していない。できなかったと言ったほうがいいかもしれない。
 なぜなら、スライダーを投げることの弊害がピッチングフォームに出てしまうからだ。
 高校時代の恩師である花巻東の佐々木洋監督が、大谷にある癖についてこんな話をしている。

「スライダーを投げると、大谷の身体の動きが横ぶりになるという悪い癖があったんです。スライダーって怖い球で、投げると非常に楽なんですよね。多少、ひじを下げても抑えられます。でも、それだと本当に速い球を投げる投手になれないんです。だから、高校の時は、ストレートを極めるためには、スライダーを禁止していた時期のほうが多かったです」

 もし、高校時代に大谷が勝利を優先してスライダーを多投していたなら、勝てる投手に近づいていたかもしれない。しかし、高校3年夏の岩手大会でマークした160キロには届かなかったという見方もできるのだ。

 高校生時分での「完成度」を置き去りにした。つまり、勝てるピッチャーにはなれなかったのだが、大谷にはこだわりがあった。

 大谷も当時、こう話している。

「スライダーを投げすぎると、ストレートがシュート回転する癖があったんです。身体が横ぶりになるからですけど、ストレートに影響が出たりするのが嫌だったので、スライダーは投げすぎないように、と。だから変化球はカーブを投げるようにしていました。それだと体を縦に振ることができますから。身体を縦に振りながらスライダーを投げることができるようになれれば良いんですけど、そこはこれから考えていかなければいけないことかなと思います」

 もっとも、そうした癖は大谷だけが陥るわけではない。
 かつてはPL学園高校時代の前田健太(ドジャース)にも同じような経験があった。前田も高校時代はスライダーを投げていない。今の姿を見れば想像もつかないだろうが、前田はスライダーを投げるとストレートの質が悪くなることを危惧していたのだ。プロ入り後、身体ができるのを待って、前田はスライダーを習得したのである。

 いわば、9月28日の試合、大谷がストレートとスライダーだけ1安打完封を果たした背景には、そうした彼の4年間の積み重ねがあるというわけである。

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