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犠打は日本球界のトレンド?最近の犠打数激増の謎に迫る 【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はNPBとMLBの犠打についてだ。

2014/12/26

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犠打の記録から見る、野球の違い

 さて、今世紀に入ってから犠打の記録は大きく様変わりしている。
 1試合当たりの犠打数の推移を、リーグごとに見ていこう。参考までにMLBのアナ両リーグの推移も載せる。
 
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 野球記録では「指名打者のあるリーグのほうが犠打が少ない」というのが常識だ。打席に立つ投手は走者が前に出れば犠打、がお決まりのパターンだったからだ。
 
 確かに2005年の時点では、指名打者のあるパリーグ、アリーグのほうが犠打数が少なかった。
 しかしそれ以後、パリーグでは犠打数が急増。セリーグとほぼ同じレベルになり、昨年からはセリーグを大きく引き離している。
 これは、「野手がバントを多用している」ことを意味する。
 
 最近、なぜパリーグは犠打を多用しているのか?
 2005年以降のセパ両リーグの各球団の1試合当たりの犠打数を見てみよう。
 1を超えた数値は赤字にした。また、監督が交代したシーズンは、数字の下に赤線を引いた。
 
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 セリーグでは10年間で巨人が6回リーグ優勝を遂げている。
 ここ9年は原辰徳監督が采配をとっている。原巨人は、1度も犠打数が1を超えていない。強打者ぞろいの巨人では、犠打を使う必要性は低いのだ。「犠打者弱者の戦法」を裏付けるデータだ。
 
 落合中日は犠打を多用している。守りのチームであり、接戦をものにするためには、犠打が不可欠だったのだろう。2011年オフ落合監督が退任し、高木守道監督になってからは犠打が減っている。
 
 2006年にパリーグの犠打数が急増したのは、日本ハムが戦略を大転換させたことが大きいと思う。
 2005年オフ、契約を延長したトレイ・ヒルマン監督は「日本には日本の戦い方がある」と考え方を改め、翌年、犠打を多用し優勝した。以後も日本ハムは最も犠打を多用するチームの一つだ。
 日本ハムの犠打多様に刺激されて、パリーグの犠打数が増えたのではないか。
 
 2011年にセパ両リーグの数字が跳ねあがっているのは飛ばない「統一球」の影響だろう。
 2009年まで、同じ外国人監督であるボビー・バレンタインが率いていたロッテは犠打数は少なかった。バレンタイン監督はMLBのスタイルを貫いたと言えるだろう。
 
 犠打数とチーム成績にはあまり相関性がない。チーム事情や指揮官の個性によって、犠打数は変化している。
 また、「トレンド」を見てとることもできる。1球団が犠打を多用すると、他球団もそれを真似ることもあるようだ。
 パリーグはここ10年「犠打を多用するトレンド」になっているという見方もできよう。
 来季以降の犠打数の推移にも注目していくと、面白いのではないだろうか。

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