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“厄介な選手”西川遥輝。日本ハムVの立役者は高い出塁率・盗塁成功率と併殺打ゼロ

パリーグを大逆転で制した日本ハム。その立役者の一人が西川遥輝だ。栗山英樹監督は優勝インタビューでも、「遥輝の足」とチームの象徴として挙げていた。智弁和歌山高・高嶋監督の証言をもとに西川の魅力に迫る。

2016/10/04

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恩師・高嶋仁が語る西川の盗塁は「スピード」「研究心」「度胸」

 

リーグ優勝を決めて間もなく、高校時代を指導した高嶋監督に話を聞く機会があった。すると西川としばらく前に顔を合わせた時、こんなことを言ったんですよ、と教えてくれた。

 

「プロの世界じゃ、3打数1安打と4打数1安打で天と地。それで1億、2億変わるんやから。4-1を3-1、その気になったら簡単なことやろ」

 

高校野球界の名将にして、何事にも妥協を許さない高嶋監督らしい檄だが、師の言葉を実践したかのような今季の打席でもあった。

打席でのいやらしさの上に足だ。41盗塁はリーグ3位も、特筆すべきは失敗わずかに5、89.1%を誇る成功率だ。リーグトップ53盗塁の糸井(オリックス)、金子(西武)は共に失敗も17あり、成功率は75.7%。西川の成功率は際立つ。この足について高嶋監督は「高校時代に盗塁の失敗は見たことがない」と言ったあと、「でも、それよりね」と続けた。

 

「走る時はいつも1球目。それも1年の時からで、ここが他とは違う。遥輝のスピードがわかってからは塁に出たら、いつでも行っていい、というサインを出してたけど、走るつもりの時はとにかく初球から走る。初めの頃はもうちょっとピッチャーを見てから走らんかい、と言ったりもしたけど本人は涼しい顔で『大丈夫です。失敗しませんから』と。ベンチにおる時からよう相手投手を見ていたんでしょうね。最初に出た甲子園(1年夏)でもいきなり走りましたから。スピードと研究心と度胸、そういうところを持っていました」

 

さらに今年の西川は両リーグの規定打席到達者の中で唯一、併殺打がない。この話題を向けると高嶋監督は、そらそうでしょう、といった感じで思い出を語った。

 

「全力で走ったらそれは一塁までも速かった。ただ、かといって常に全力疾走です!と走るタイプでもなかった。間違いなく走るのはスカウトが見に来ていた時。下級生の時は1年上の岡田(中日)を見にスカウトがよう来ていたから、そういう時は練習試合でもスピードのノリが違った(笑)。そのあたりはプロに行く子、自分の見せ方もわかってた」

 

ドラフトでは事前の予想を上回る2位指名。高嶋監督も驚いたそうだが、後日、日本ハムのスカウトからこう聞かされたと言う。

 

「一塁までの到達タイムが今年のドラフト候補の中ではナンバーワン。これは大きな魅力でした」

 

併殺打なし。一見地味に映る記録だが、少し想像してほしい。ピンチでゲッツーに打ち取ったと思ったあとに打者走者が1塁に残る投手、野手陣の気持ちを。逆に、チャンスが潰えたと思ったら攻撃が続くことになった攻撃陣の気持ちを。併殺の成立、不成立が両チームの、その後のゲームに与える影響は限りなく大きい。

 

さらに「そもそもゲッツーがないという前提に立って作戦を立てられることがベンチとしては大きいんです」と話したのは白井ヘッドコーチだが、何を置いてもまずは西川の突出したスピードがあってこそ。塁上でも、打者走者としても走り出しから、トップスピードに乗るまでが抜群に速い。ただ、それだけで昨年9月2日のロッテ戦以来、632打席もの間、無併殺が続くものだろうか。

 

先のオリックス戦前、優勝目前でごったがえすベンチ裏で本人に聞いてみた。

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