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山田も離脱、主力不在の非常事態も……逆転CSへ合言葉は「下町スワローズの魂見せる!」【新・燕軍戦記#29】

畠山和洋、川端慎吾、雄平に続き、チームの看板である山田哲人までが故障で離脱。まさに非常事態に陥りながらも、今月に入って4カード連続で勝ち越している東京ヤクルトスワローズ。そのナインには今、合言葉が存在するという。

2016/08/17

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「『東京』って名乗れるほどの花形はいない」

 昨年の打点王・畠山和洋もいない。昨年の首位打者・川端慎吾もいない。一昨年のベストナインで、昨年はセリーグ優勝を決めるサヨナラヒットを放った雄平もいない。主力打者がケガで次々と姿を消していく中で、チームの看板として気を吐いていた山田哲人も、左第八肋骨骨挫傷で8月10日に登録を抹消されてしまった。

 まるで生まれ変わったかのように野手のメンバーが一新されたヤクルトが、ここへ来て善戦している。8月に入って4カード連続の勝ち越し。7月末の時点では借金15を抱えて最下位に沈み、3位の横浜DeNAにも7.5ゲーム差を付けられるなど、クライマックスシリーズ(CS)出場もかなり厳しい状況にあったが、気が付けばその差も4.5ゲームにまで縮まっている。

「今の合言葉は『下町スワローズの魂を見せてやろうぜ!』ですから」

 そう話すのは、今年は畠山不在の一塁を中心に、川端不在の三塁や本職の遊撃でも先発するなど、ヤクルト移籍後最多の84試合に出場して打率.302をマークしている今浪隆博だ。

「グッチ(坂口智隆)が言い出したんですよ。『下町スワローズの力、見せたろかい!』って。(主力不在で)勝ってるのが不思議なメンバーですけど、見てるお客さんは面白いでしょうし、こういう試合を続けていければいいかなと思います」

 確かに「勝ってるのが不思議なメンバー」である。8月12日から本拠地・神宮に2位の巨人を迎えて行われた3連戦。その初戦のスターティングメンバーは以下のとおりだ。

1番・中堅 坂口智隆(32歳、年俸3000万円)
2番・右翼 比屋根渉(29歳、年俸2000万円)
3番・遊撃 西浦直亨(25歳、年俸1250万円)
4番・左翼 ウラディミール・バレンティン(32歳、年俸3億6000万円)
5番・三塁 今浪隆博(32歳、年俸1950万円)
6番・二塁 谷内亮太(25歳、年俸1050万円)
7番・一塁 鵜久森淳志(29歳、年俸750万円)
8番・捕手 西田明央(24歳、年俸860万円)
※年齢は8月16日現在、年俸はいずれも推定。

 優勝した昨年の「レギュラー」は皆無。今季開幕戦の先発メンバーと比べても、両方に名を連ねているのは、移籍1年目の坂口しかいない。バレンティンを除く7人の年俸総額はわずか1億860万円。そんなメンバー構成に、坂口は「『東京』って名乗れるほどの花形はいない。オレらは『下町スワローズ』だ」と言い出したのだという。

 チームの本拠地は、東京でも山の手の青山界隈にある神宮球場。ただし、その『主役』であるべき煌びやかなスター選手不在の今、「下町魂」で試合に臨む選手たちには、とびっきりのハングリー精神が宿っている。彼らはそれほど出番に飢えてきた。

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