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中日、ビシエドのサポートだけにあらず。「キューバの至宝」リナレスを招聘した2つの理由

「キューバの至宝」オマール・リナレスが、シーズン途中に中日の巡回打撃コーチに就任した。その狙いは何か。

2016/07/27

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思うように事が運びにくいキューバ選手の獲得交渉

 もうひとつは、キューバ人選手の獲得に関してのパイプ役である。かつてキューバ政府が選手の海外派遣に踏み切ると言われた際、中日はキューバ国内の野球場を改修する費用などを負担し、それがリナレスの派遣にもつながった。

 そして、14年のシーズン途中にフレデリク・セペダ、ユリエスキ・グリエル、アルフレド・デスパイネら主力選手が次々とNPBへ移籍したが、その獲得交渉はうまく運んだものばかりではない。キューバ野球に詳しい全日本野球協会の柴田 穣事務局長はこう語る。

「14年に巨人が獲得を望んだのは、当時24歳のヤズマニー・トマス外野手でしたが、キューバ側の意向を呑んで34歳のセペダを獲得した。当然、年齢的にも目指した戦力補強にならず、おまけにトマスは亡命してしまった。そこで、今季の開幕直後には23歳のホゼ・ガルシアを獲得しましたが、今度は巨人側の戦力事情でガルシアを一軍に定着させられず、ガルシアはモチベーションを保ちにくくなっています。NPB球団とキューバ側の意向がマッチする補強を実現するには、双方の事情を理解できる窓口が必要です。中日は、まだキューバ人選手を獲得していませんが、リナレスがいればスムーズな交渉ができるでしょう」

 現在の選手を手厚くケアするにも、将来の戦力補強をスムーズに行うためにも、リナレスは不可欠な“戦力”なのである。ましてや、現役を退いて指導者に転じてからのリナレスは、順調にキャリアを積んでいるとは言えない。そんな状況で、尊敬する落合博満GMと再び一緒に仕事ができることに、リナレスは大きな喜びを感じているという。

 リナレスの入団でビシエド、バルデスのキューバ出身コンビ、ナニータらドミニカ勢が好調を維持し、ペナントレース後半に巻き返すことができるか。さらに、リナレスがどんな指導者に成熟していくのか関心を寄せたい。

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