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ベテラン井口も実感する、千葉ロッテの変化――ベンチから響く声が、逆転の雰囲気を作り出す

シーズンは交流戦を終え、これから新たなる局面に向かう。ロッテのベンチの空気がこのまま変わることなく進み続ければ、きっとそれは良い結果をもたらしているはずだ。首位を走るソフトバンクを追いかける千葉ロッテ。ベテランの井口資仁はチームの雰囲気が変わりつつあると実感している。

2016/06/24

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侍JAPANの経験をチームに持ち帰った清田

 今のロッテは若い選手が多い。

 主将の鈴木大地はしっかりもののキャプテンだが、清水雅治コーチ曰く「大地以外は人任せな選手が多いチーム」というのが実情なのだ。自身のプレーに没頭するのはいいが、周りが見えない若さゆえの脆さもあったのだった。

「去年までは一部だけが声を出していて、他が声を出していないというのがありました。今年はベンチの端から端まで声を出している。自然と声が出ていますし、下を向いているやつがいれば『声出せよ』というのも出てきている」と井口は変化を感じている。

 とはいえ、井口の場合はそれを率先して口にしていくというタイプではない。
 むしろ、背中で感じろと姿勢で見せていくプレイヤーである。

 そこで、今季、違う姿勢を見せているのが清田育宏だ。
 昨季は、130試合に出場し、打率317、15本塁打をマーク。今年3月侍JAPANの台湾との親善試合では代表入りを果たすなどチームの中核にいるプレイヤーだ。今季はややスタートに苦しんでいるが、実は、ベンチでの貢献度はかなり大きい。「清田さんの存在が大きい」とキャプテンの鈴木だけでなく、若手の三木亮や中村奨吾などが口にしているほどだ。

 清田はあえて自分が前に出ることを意識しているとこう語る。

「チーム全体に若い選手が多いんで、その中で自分が声を出すことによって空気を作りたいと思っています。みんなが声を出しやすい空気を作っていければ、チーム全体が変わると考えるようになりました」

 清田がそんな思考を持つようになったのは、侍ジャパンでの経験だ。
 ある選手の姿勢に、清田は刺激を受けたのだ。

 その選手とはソフトバンクの松田宣浩選手である。

「侍JAPANでは2試合しかなかったんで、技術的にどうのこうのっていうのは分からないんですけど、誰がどうみても、すごいなと思えたのは松田さんでした。即興で作られたチームを一つにまとめるのって難しい作業だと思うんですよ。でも、松田さんがすごい声を出してくれて、やりやすい雰囲気を作ってくれた」

 特に、初代表だった(社会人では経験あり)清田にとっては、年齢的に上の方だということもあり、どういう立ち位置を保っていいのか分からなかった。やり難さを感じながらの代表参加だったのだが、それらすべてを松田が変えてくれたのだ。

「松田さんが常に元気を出してくれていました。『うるさいなぁ』と思って聞いている部分もあるんですけど(笑)、逆にそれがチームのムード、雰囲気を作ってくれていました。そういうのってすごいなと思って、これはチームに帰ってもやるべきだと思いました。僕が声を出すことによって、若手も声を出しやすくなるような雰囲気を作っていければと思ってやっていますね」

 声を出すという部分にだけフィーチャーすると、「根性論」にも聞こえなくない。ただ、雰囲気をいい方向に向けて、チームが一つになるというやり方は、日本人らしい組織の作り方でもあるだろう。

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