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中島卓也「ファウルを狙って打つ」技術に息づく日本ハムの伝統【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#30】

北海道日本ハムファイターズの中島卓也は「ファウルを狙ってファウルを打っている」、高レベルの技術の持ち主だ。

2016/05/29

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11球粘って四球

 ファイターズは「WE LOVE HOKKAIDOシリーズ2016」最後のロッテ戦で連敗し、北海道新幹線に乗って函館から仙台へ移動したところだ。このところファウルボール訴訟、新球場構想と新聞の社会面で扱われるニュースが多いけれど、当コラムは野球の話題にする。裁判が決着し、新球場の候補地が(「15から20」ではなく)1つに絞られたときには多少書けることがあるかもしれない。
 
 負けた5月24日のロッテ戦(10回戦)のワンシーンだ。8回裏、スコアは0対3、マウンドにはロッテ好調の一要因、内竜也がいて、先頭打者は中島卓也。3点ビハインドの状況だから走者を貯めるしかない。中島の仕事はもちろん出塁だ。
 
 と、これが絵に描いたような中島の打席だったので笑ってしまった。申し遅れたが中島は今のファイターズで僕のいちばんのお気に入りだ。いきなりファウル2つで2ストライクに追い込まれてからが真骨頂。粘る粘る。そこから3ボール2ストライクのフルカウントをつくるのだ。で、結局、11球粘って四球で歩いてしまった。
 
 この粘りに関しては『ゲットスポーツ』(テレビ朝日系、5月2日放映分)が「日本ハム中島卓也 ”究極の思考”」という特集を組んで見応えがあった。何と中島は追い込まれた後、ヒットゾーンを三塁側に90度ずらして設定し、つまり「ファウルを狙ってファウルを打っている」のだった。これは「苦手の球をカットする」より一段技術レベルが高い。よくファンがビールの勢いを借りたりして「おーい、前へ打て~!」なんてヤジを飛ばすが、中島は横へ打ってるのだ。
 
 この中島の技術にはファイターズの伝統が息づいている。まず中島のバッティングを一からつくり上げた功労者は小田智之コーチだ。小田コーチは非力な打者が生き残る道を中島につきっきりで模索した。これは彼の「代表作」にして「傑作」だと思う。おかげでパの名物が仕上がった。

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