大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



Home » プロ野球最新情報 » 西武 » チーム打率リーグトップも下位低迷の西武。将来に向けたベンチワークへ一考を

チーム打率リーグトップも下位低迷の西武。将来に向けたベンチワークへ一考を

パリーグで下位に沈む西武が苦しんでいる。状況を打開するための策は講じているが、根本的な問題は解決に向かっていない。かつての王者、西武に、今、何が起きているのか――。

2016/05/23

text By



4年目の左腕・佐藤勇に期待を掛けているが……

 45試合終了時点で首位ソフトバンクと9.5ゲーム差、気づけば3位日本ハムとの差も5.5ゲームに開いた。5月18日のロッテ戦から3連勝と波に乗るかと思われたが、22日のソフトバンク戦では立ち上がりから本調子でない相手先発の武田翔太を捕まえ切れず、中盤に逆転されて敗戦という今季の負けパターンを繰り返した。

 シーズン序盤から下位に沈む西武にとって、問題は目の前で敗戦を重ねていることばかりではない。まるで自転車操業のように、眼前の課題をやり繰りしようとするあまり、将来を見据えて投資する力がなくなっているのだ。

 5月17日、QVCマリンフィールドで佐藤勇が先発したロッテ戦は、まさにそうした試合だった。高い期待を背負う高卒4年目の左腕は立ち上がりから好投したものの、勝ち投手の権利がかかったイニングを投げ切れずにマウンドを降りている。

「5回のあと一人を抑えられなかったところが次の課題です」

 広報を通じてそうコメントを残したように、プロ入り初勝利まであと1アウトに迫っていたから悔やまれる。

 さらに、西武の首脳陣が数年前から佐藤を先発ローテーションの一角に育てようとしてきたことを考えると、起用法にも疑問が残る。

 西武が1対0でリードして迎えた5回裏、1死2、3塁で9番・中村奨吾の場面では、左腕投手の高い才能が垣間見えた。

 1、2球目はともに内角の厳しいコースにストレートを投じ、1ボール、1ストライク。
 
 この試合の初回、佐藤は右打者の内角に投げ切れない場面があったものの、2回以降は修正していた。そして5回に中村を迎えたこの場面でも、捕手・岡田雅利の意図通りに投げてみせた。

 中村への3球目、再び内角に構えた捕手の狙いとは逆のコースにストレートが向かったものの、力のあるボールでショートゴロに打ち取る。3塁ランナーを三本間でアウトにし、このピンチを切り抜けるまであと1アウトにした。

 だが、これで一息ついてしまったのだろうか。ピンチを切り抜けるまでであと1アウトにこぎつけながら、その後に打たれるシーンは若手投手のみならずよく目にする。1番に返って細谷圭に投じた初球のカーブが内角高めに浮き、ライトへの2点タイムリーで逆転を許してしまった。
 
 ただ、佐藤が将来的に先発ローテーションで回っていくような投手になるためには、この後をどう抑えるかが極めて重要になる。
 
 迎えた加藤翔平には初球、内角を狙ったストレートが外角に抜ける。2球目、内角への138kmストレートが3塁線を抜かれ、2死1、3塁。

 ところが、ここで田邊徳雄監督は藤原良平へのスイッチを決断した。
 
 この交代の良し悪しについては、結果論でしか語ることができない。藤原が打たれたものの、仮に抑えていれば好リリーフですべては片付けられる。
 
 ただし、交代の背景は掘り下げるべきだ。確かに佐藤が苦しんでいたのは事実だが、続く清田育宏まで任せる選択肢はなかっただろうか。なぜなら、ここで抑えても、たとえ打たれたとしても、佐藤の今後にとってかけがえのない財産になるからだ。

 そうした起用ができないのは、今季序盤に敗戦を積み重ねている西武にとって、目の前の勝敗に固執せざるを得ない状況がある。それはプロとして当然である一方、チームに若手がなかなか台頭してこない状況を考えると、現在の起用法が未来にさらなる打撃を与えないかと危惧してしまうのだ。

1 2