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25年ぶり「開幕10戦セーブなし」の珍事。ヤクルト喫緊の課題は「新・勝利の方程式」構築【新・燕軍戦記#22】

開幕から10試合を消化して3勝6敗1分けと、スタートダッシュに失敗した東京ヤクルトスワローズ。まだ先は長いとはいえ、ここから優勝争いに食い込んでいくために不可欠なのが「新・勝利の方程式」の構築である。

2016/04/06

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「開幕10試合でセーブなし」は1991年以来

 25年ぶりの珍事──。
 開幕から4連敗を喫したヤクルトは、そこから引き分けを挟んで3連勝と巻き返したものの、10試合を消化した時点で3勝6敗1分けと、出足でつまずく形となった。もっとも「珍事」はその勝敗ではない。ここまでセ・パ12球団で、ヤクルトだけセーブがゼロなのだ。

 昨年はリーグ最多セーブに輝いた守護神のトニー・バーネット(現MLBレンジャーズ)が、開幕4戦目の3月31日阪神戦(神宮)で初セーブをマーク。その前年、2014年はバーネットがケガで登録を抹消された4月4日(阪神戦)に、クリス・カーペンターが来日初セーブを挙げていた。開幕5戦目のことだった。

 それ以前でも、10試合を消化した時点でセーブゼロというシーズンはなかなかない。今年と同じく開幕4連敗を喫した07年は、チームが初勝利を挙げた5戦目に高津臣吾(現投手コーチ)がセーブを記録。開幕8戦で2勝6敗と苦しんだ03年も、9戦目にして高津がチーム初セーブを挙げていた。

 今年と同じ状況にあったシーズンにたどり着くには、世紀をまたいで1991年、つまり25年前までさかのぼらねばならない。この年、絶対的な守護神不在のまま野村克也監督2年目のシーズンを迎えていたヤクルトは、開幕から10試合を終えて5勝4敗1分け。だが、延長10回の末にサヨナラ勝ちを収めた4月16日の中日戦と、宮本賢治(現二軍監督)が5回途中からのロングリリーフで勝利投手となった同19日の巨人戦を除く3勝はすべて完投勝ち。つまり、先発投手が最後まで投げきることこそが勝ちパターンだったのだ。

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 結局、ドラフト1位ルーキーの岡林洋一(現スカウト)がチーム初セーブを挙げたのは、25試合目の5月7日。開幕からほぼ1カ月が経っていた。もっとも、当時はまだ「勝利の方程式」という言葉自体なく、12球団を見渡しても絶対的な抑えがいるのは、大野豊を擁してセ・リーグを制した広島ぐらい。ヤクルトは41完投、巨人などは57完投を記録しており、今ほど抑えの投手や「勝ちパターン」の継投が必要とされない時代だったのである。

 この91年は、セーブの数は12球団合わせても238だったのが、昨年は計457セーブとほぼ倍増している。そんな現在のプロ野球にあって、10試合を消化してセーブなしというのは「珍事」と言わざるをえないが、だからといって今のヤクルトに守護神がいないわけではない。

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