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チーム低迷でも「値引きせず」。高級ブランド会社と同様のチケット販売戦略から見る、スポーツビジネス【経営学から見たカープ】

どんなに成績が低迷してもチケットそのものの値引きをしない。その一方でチケットを買うに見合った独自性・魅力性を担保する。ブームを客観的に見て、次の戦略に打って出る。現在のスポーツビジネスに求められる姿勢ではないだろうか。

2016/04/04

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ルイ・ヴィトンと同じ戦略

 大前提として、赤ちゃんからお年寄りまで男女問わず、繰り返し球場に来てもらえるようなサービスを提供する戦略を球団は積極的に行っている。いわゆる3世代が楽しめるサービスとリピーターの創出である。
 
 その中で、まず、プレミア化だ。付加価値のあるものに対して、お金は落ちる。
 ただ野球観戦する場所であれば、その付加価値はつかない。マツダスタジアムという場所ができ、その場でしか味わうことができない経験ができるようになった。
 
 それはファンに飽きさせないために球団が経営努力を行うことでもある。今年のスタジアムの一推しとして「お化け屋敷ですね。昨年のアイスボックスは若い世代から30歳くらいまでのカップルや家族の利用が多かったです。今回のおばけ屋敷はアイスボックスの顧客層をほぼカバーすることになります。また、会社トップからはただ単に作るのではなく、本格的なものにする方針の基に、お化け屋敷プロデューサーの五味弘文さんに演出してもらっています」(島井氏)
 
 野球というスポーツコンテンツの中に、エンターテイメントの要素を取り入れ、ブランド力を高める。それには簡単に価値を下げてはいけない我慢が必要である。これは球団の歴史やファン文化が土台にあるからこそ、できる戦略かもしれない。
 
 次にコミュニケーション。長年の年間指定席を購入してきたファンにコミュニケーションをとり、手厚いサービスで応えてきた。
 
 また、マスメディアを利用したコミュニケーションも積極的に行っているのではないか。最近は郷土出身の著名人とコラボレーションし、それいけカープの合唱や漫画家によるカープをモチーフとした新聞広告など人々の注目を集めている。マスメディアにも積極的に選手を露出させ、身近に感じてもらおうと努力しており、メディア戦略もうまく行っているように私の眼には見える。
 
 このように様々な媒体を使って、ファンとコミュニケーションをとることで、日常的にカープを近くに感じる。それが、職場や家庭でのコミュニケーションツールとしてうまく機能しているところでもあり、全国にファンを作っている要因なのではないか。
 
 最後にロイヤリティ。これを簡単に説明すると、顧客が企業に対する親密性や信頼性のことである。カープは広島に60年以上存在し、親会社を持たない独立採算制の経営を行ってきた。
 
 その中で、ファンと独自の親密性や信頼性を築いてきた。それは創設期の球団危機によるたる募金や黄金期の赤ヘル旋風、そして球団合併問題に揺れた球界再編問題など、良い時も悪い時も共に歩んできたストーリーがあるからだろう。
 そして、現在、マツダスタジアムという最高の場を得たことで、これがより強固なものになってきている。
 
 実は『プレミア化』『コミュニケーション』『ロイヤリティ』はルイ・ヴィトンなどの高級アパレルブランドもこのような戦略を用いている。このようなブランドもやはり歴史・文化を醸成してきたからこそ、このような戦略がとれる。

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